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新入社員に教えられる

新入社員研修と言えば、新入社員から反論されて、「なるほど!」と唸った経験がある。

新入社員の反論

もう15年くらい前のことだ。ある企業で10人に満たない少数の新入社員研修でのこと。

私は、コミュニケーションやプレゼンテーションなどのヒューマンスキルを担当した。4月下旬ごろだったはずだ。とても和気あいあいとしたムードの中、日々過ごしていた。

どういう文脈のやり取りであったかはもう忘れてしまったが、演習で学生っぽいノリの対応をしているのを見かけ、「ビジネスシーンなら、こういう対応をすることが多い」と説明した後、「これ、社会人の常識ですよ」と笑顔で添えたところ、一人が手を挙げた。


「田中さん! 僕たちは、その“社会人の常識”がないから、今、こうして新入社員研修を受けているんですよ」

彼はニマっと笑いながら、そう言った。


「確かに!その通りですよね。失礼しました」と素直に認めて、「新入社員研修って、そういうことを学ぶ場ですもんね」と言うと、「そうですよぉ」と全員が笑いながら口を揃えて同意した。

ここだけ読むと険悪なムードと思うかもしれないが、いたって友好的な空気の中で、新入社員が講師に突っ込んでいる場面だと想像していただけると嬉しい。見事な反論に心の中で「座布団1枚!」と思ったほどだ。


「常識」「当たり前」と言う前に

「僕たちは、その“社会人の常識”がないから、新入社員研修を受けているんですよ」という返し(突っ込み)は、ものすごくインパクトがあり、その後、「OJTトレーナー研修」を担当するようになってからは、OJTトレーナーの皆さんに、こう伝えるようになった。


「私たちは、つい“そんなことは当たり前だ”“それは常識でしょう?”と相手に言ってしまうことがありますが、“当たり前”“常識”は人によって異なるものです。相手が新入社員だったらなおのこと。だから、“そんなの常識でしょう?”ではなく、もし、それを“常識”と考えるのであれば、“これは、今後、常識として覚えておいてね”という伝え方をすることが大事なんですよね」

新入社員研修での体験も交えて話すと、多くの方が、「確かにそうだなぁ」「なるほど~」とおっしゃる。

実は相互に学んでいる

「負うた子に教えられ」という表現があるが、毎年、新入社員研修では、講師側も新入社員に教えられることが多い。

ある時は、外国出身の新入社員に、敬語の学習の際、「“お”を付ける言葉と“ご”をつける言葉は何か」と質問された。私にとっては母語である日本語。自然に使い分けをしていることから、どういうルールがあるかとっさにわからなかった。調べてみると、「和語と漢語の違いがある、しかし、例外もある」といった答えだったのだが、それを翌日、解説した上で、「私も改めて調べてみて、勉強になりました。ありがとうございました。」と言うと、質問した新入社員がとても嬉しそうな顔をしていた。


こうやって講師も「学んだ」「勉強になった」ときちんと伝えていると、「すごくベテランに見える講師も“勉強になる”“学ぶ”という視点を持っているのだなとそれ自体が新鮮だった。私もいつまでも“学ぶ”人になりたい」と日報に書いてあったこともある。

講師だけでなく、職場の上司も先輩もOJTトレーナーも、人に何かを教えたり、人を育てたりするプロセスは、自分の学びのプロセスでもある。

そう思って取り組むと、見える景色がちょっと変わってくるように思う。


さて、今年もこの季節がやってきた。2021年の新入社員研修で、私は何を学ぶことができるだろう。楽しみである。


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田中淳子(たなかじゅんこ)

田中淳子(たなかじゅんこ)

トレノケート株式会社 人材教育シニアコンサルタント。産業カウンセラー。国家資格キャリアコンサルタント。1986年日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。ビジネス・スキル全般の人材育成支援に当たっている。新入社員から60代まで幅広くビジネススキルやキャリア開発の研修とワークショップを実践中。 【著書】 『ITエンジニアとして生き残るための「対人力」の高め方』『現場で実践!部下を育てる47のテクニック』『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』(日経BP社) 『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)など。 【ブログ】「田中淳子の”大人の学び”支援隊!

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