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上司が部下の話を聴けないのはなぜか?

「目標管理面談」「評価面談」など目標管理制度に組み込まれた面談、「1on1ミーティング」といった日々の対話の場、「進捗報告」「雑談」。上司と部下が会話する場面は、日常に多々あります。

部下の話を「聴く」のが苦手な上司たち

研修の現場で観察している限り、一般的に上司は部下の話を丁寧に聴き切るのが苦手です。


たとえば、「1on1ミーティング」の研修で、「部下の悩みを聴いてみよう」というテーマでロールプレイをする場面で説明します。
1社向け研修で開催されることも多いこの研修、全員管理職ではありますが、受講者同士で上司役と部下役に分かれます。

「実は、●●のことで悩んでいて……」といった出だしで部下にぽつぽつとリアルな悩みを話していただきます(リアルといっても、現在の悩みではなく、自分が若手だった頃のことを思い出して、臨場感を持って話すように促します)。

上司は、「ふむふむ」と数十秒は話を聴いていますが、たいていの方がまず何をするかと言ったら、「アドバイス」です。


再現してみましょう。

  • 部下:
    テレワークには慣れたのですが、オンオフの切り替えが難しくて……。
  • 上司:
    そうか。オンオフねぇ。そうだなぁ、オフか。何か趣味はないの?
  • 部下:
    趣味ですか。アウトドアは好きですけど、平日の夜やることではないし。
  • 上司:
    確かにそうだなぁ。じゃあ、平日夜できるような趣味をまず見つけてみたらどうかな。
    俺だったら、音楽聴くとか、夜はスポーツジムに行くとかでスイッチ切り替えているけど。
  • 部下:
    ああ、なるほど音楽とジムですか。そんな余裕あるかなぁ。
  • 上司:
    余裕?あ、そうか、無料で楽しめる音楽もあるから、教えてあげるよ。
  • 部下:
    え、あ、ありがとうございます。

 

ちょっと極端に会話を作ってみましたが、こんな風に展開することは非常に多いのです。

上司は、部下の悩みを聴いて、「自分だったらどうするか」をどんどん考えてしまう。部下の悩みの解決策としてどういうアイディアがあるか、「案①、案②・・・」と提示してしまう。

部下は、上司が一生懸命考えてくれるものを聴き、「ずれているな」「そこじゃないんだけど」と思いつつも、相手は上司ですし、良かれと思ってのアドバイスなので、「なんか違う」と思いつつも、「はい」「そうですね」「ありがとうございます」と相槌を打ってしまう。

こういうロールプレイ、非常によく見ます。

なぜ上司は部下の話を聴くことができないのか?

では、なぜこうなるのか?

ほとんどの場合、上司の方が経験は豊富で、多くの知見も持っています。役割上、部下を支援するというミッションを持つ自覚もあります。部下が困っているなら上司としてよい解決策を見つけてあげなければと張り切ってしまう面もあるようです。

「解決策やアドバイスは言わなくてよいので、最後までまず聴いてみましょう。」
と研修内でフィードバックした時に、マネジャーの皆さんから、「それが難しい。上司たるもの、上司らしいことを言わないといけないと思っているから。いいアドバイスもできないと、部下にがっかりされるのではないかと思い、不安にすらなる。」と言われたこともあります。上司もそういう気負いを抱えて大変なのですよね。

この会話の後、部下は果たして音楽を聴くでしょうか?おそらく聴かないでしょう。

1週間後、上司が「オンオフの切り替え、うまくいっている?音楽、聴いてみた?」と尋ねたら、部下は苦笑いしながら、上司に忖度して「ええ、まあ、大丈夫です。」と、ごにょごにょ言うかもしれませんけれど。

部下の話を深く聴いて理解する

さて、では、ここで問題です。

  • 部下:実は、テレワークには慣れたのですが、オンオフの切り替えが難しくて……。

部下がこう切り出した時、皆さんなら、どうこの会話を展開しますか?考えてみてください。答えは1つではありません。

 

・・・・・10秒間、考えてみましょう。・・・・・

 

 

 


では、展開例を考えてみましょう。

 

  • 部下:実は、テレワークには慣れたのですが、オンオフの切り替えが難しくて……。
  • 上司:オンオフの切り替えが難しいってどういうことかな。もう少し詳しく聴かせて。(「オンオフの切り替えが難しい」の意味するところを掘り下げている)

まずは、部下が言わんとしていることをもっと聴く、深く聴く、言葉の裏を理解することから始めます。

この答えによって、この後の展開も変わってきます。


たとえば、部下が「いつまでも働いちゃうんです。」と、労働時間が長くなり過ぎ、やめ時が分からないことを悩んでいるなら、残業にならない働き方を一緒に考えればよいのかもしれませんし、「いつも家にいるので、気分が切り替わらない」という「時間ではなく、気分の話」をしているのであれば、気分の切り替えという点に焦点を当てて、さらに「部下がどういう状態にあるのか」「どうしたいと思っているのか」を聴いていけばよいでしょう。

 


 

「大半は上司が話している」という1on1ミーティングになっていると自覚している方は、まず、「アドバイスしたい気持ち」を封印して、「部下が何をどう考えているのか」を徹底的に聴くことを自らに課してみることです。


人は、誰かに話を丁寧に聴いてもらうと、案外、自分で解決策を見つけてしまうこともあります。話しただけですっきりして、「大した問題ではなかった」と気持ちの整理がつくことも。上司だからといって「いいことを言わなくては」と思うのではなく、「この人は、何をどう考えているのかな?」に関心を寄せ、聴き続けているとアドバイスなんかしなくても、悩みや問題を解消してしまうことも多分あると思いますよ。


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田中淳子(たなかじゅんこ)

トレノケート株式会社 人材育成ソリューション部 兼Sales Enablement推進室。国家資格キャリアコンサルタント/産業カウンセラー/整理収納アドバイザー1級。 若手からシニア層まで幅広く多様な人材開発のプログラムの設計や開発、講師、お客様の育成に関する課題解決のご支援などを担当。著書は、『事例で学ぶOJT』(経団連出版)、トレノケート都川信和との共著『ITエンジニアとして生き残るための「対人力」の高め方』(日経BP社)など多数。人材開発に関するブログ「田中淳子の"大人の学び"支援隊!」、音声配信「Voicy「人材育成」応援ラジオ」を毎日配信など、社外への情報発信にも力を入れている。

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