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転職者の「アンラーニング」と「学び」

先日、まもなくデビューを控えた講師の最終審査の会(これをトレノケートでは「大レビュー」と呼んでいます)がありました。

大レビューとは、「先輩講師や講師以外の部署の社員が集まって、実際の講義を見て、合否を判定する場」です。以前は、夕方教室が空いた時間帯に大勢が集まって実施しましたが、昨今の事情により、教室にリアルに集まる人とオンライン(Zoom)から参加する人が混ざり、総勢、20~30人が講師のレビューを見守ることとなります。

50代で講師に転職

今回は、「プロジェクトマネジメント」関連コースでデビューを予定している講師のレビューでした。50代でキャリア採用入社、講師経験なし、プロジェクト経験多数というAさん(身内ですが、「さん」と表現しますね)。3か月の練習を経て、いよいよ練習の成果を見せる日を迎えたわけです。

話し方も落ち着いているし、受講者全体をよく見ているし、講義も分かりやすく、例示も理解の助けになります。質問の受け答えもまずまず。なかなかの仕上がり具合で、無事合格。今後のデビューに備えてさらに勉強の日々が続きます(がんばれ〜♪)。


私は、キャリアコンサルタントなので、他者のキャリアにとても興味があり、レビューが終わった後の雑談で、「Aさんはどうして講師になろうと思ったのか」を尋ねてみました。

50代で転職を考えた際、講師という選択肢は全く持っておらず、エージェントからトレノケートを紹介されて、「ああ、講師という職種もあるのか。経験が活かせる仕事かも」と思ったそう。

面接で、講師チームのマネージャーからも「講師は価値のある仕事だ」と熱い想いを聴き、入社することにしたとのこと。

「これまでの自分の経験や考え」を見直す

「実際に入社して、講師の修行を3か月してきたわけですが、感想は?」と聴くと、「最初は大変でした」と言います。


「『自分の長年の経験を伝えればいいのだな』と思っていたのですが、そうじゃないと言われ、さらに、ネクタイが曲がっているなど身だしなみや立ち居振る舞いも一つ一つ指摘されて、ぐんと落ち込みました。でも、講師というのは、経験を伝える人ではなくて、きちんと理論やよりどころとなるルール、仕組みなどを正しくわかりやすく伝える仕事であって、経験談がメインではないのだとだんだん理解できました。考え方を変え、とにかく勉強しました。」

ああ、いい話だなぁとしみじみ思いました。

一般に、年齢を重ねるほど、人はかたくなになり、変わりにくくなります。自分のやり方に固執したり、他者からのアドバイスを受けにくくなったりもします。私も50代ですからよくわかります。


しかし、Aさんは、『経験を伝えられるいい仕事だ』と捉えていた講師像を、周囲の先輩たちからの指摘で、見直していったというのですね。

そして、「講師の仕事」を自分なりに理解し、基本から学び直しました。そうして、3か月。教え方の基本的な知識やスキルに沿った講師に成長したのです。これは、まさにアンラーニング(Unlearning)※のプロセスです。

※アンラーニング:「学習棄却」「学びほぐし」と言われたりする言葉で、一度学んだことを見直すことを指します。


企業の人材育成を支える私たち講師は、研修内で、理論や理屈ばかりを話していてもダメですが、体験談をとうとうと述べるだけでも当然ダメです。理論や理屈、たとえば、プロジェクトマネジメントであれば、PMBOK(R)という拠りどころを常に頭に置いて、PMBOK(R)ではどう書いてあるか、をまずは押さえること。その上で、現場経験ではこんな風に応用した、適応した、といった体験談を添える。経験談はあくまでも理解を促すための彩りのようなもの。このバランスがとても難しいのです。


40~50代の社会人経験が長い方が、「私の長年の経験を伝えたいから講師をやりたい」とおっしゃることが時々あります。しかし、それだけでは講師としてうまくいきません。かといって、「経験は全然なく、具体例も出せないのですが、テキストに書いてあることはよどみなく伝えられます」というのも、受講者の理解の支援ができません。

講師は、理論と実践、理屈と経験、この二つを絶妙に混ぜて提供することが大事です。ただ、経験や体験談は、柱ではないのです。トッピングのようなものです。

理論とか理屈とか拠って立つべきものは、毎日勉強、とにかく勉強。常に知識のアップデートが必要です。

「他者の学びを支援する仕事」である講師は、だからこそ「まずは自分自身、学ぶことが好き」であることが望まれます。

 


 

でも、これ、講師に限った話ではないですね。

転職者は、どの職場でもどの年齢、どういう経験を持っている人であっても、新しい職場では「これまでの自分の経験や考え」を見直す場面に必ず直面します。アンラーニング後にリラーニング(学び直し)をして、新しい職場で自分を再構築していくことになります。そして、新しい職場に馴染み、活躍するためには、何歳であろうと「学ぶことが好き」であることは必須条件だろうと思います。



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田中淳子(たなかじゅんこ)

トレノケート株式会社 人材育成ソリューション部 兼Sales Enablement推進室。国家資格キャリアコンサルタント/産業カウンセラー/整理収納アドバイザー1級。 若手からシニア層まで幅広く多様な人材開発のプログラムの設計や開発、講師、お客様の育成に関する課題解決のご支援などを担当。著書は、『事例で学ぶOJT』(経団連出版)、トレノケート都川信和との共著『ITエンジニアとして生き残るための「対人力」の高め方』(日経BP社)など多数。人材開発に関するブログ「田中淳子の"大人の学び"支援隊!」、音声配信「Voicy「人材育成」応援ラジオ」を毎日配信など、社外への情報発信にも力を入れている。

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