リスキリング事例を紹介!実践例から導入ポイントを学ぼう
近年、社会のデジタル化が急速に進んでいく中、リスキリングにより従業員の能力を上げたいと考えている企業も多いでしょう。
しかし、いざリスキリングを導入しようと決めても、初めての場合は具体的にどのような取り組みを行えばいいか悩むのではないでしょうか。こちらでは国内企業で行われているリスキリング事例を紹介するとともに、事例から読み取れる成功のポイントを紹介します。スムーズな導入を進めるためにも、実際の事例を参考にしてみましょう。
企業がリスキリングを導入する場合は事例から学ぼう
企業が初めてリスキリングを導入する際「何から始めたらよいか」「どのような取り組みをすればよいか」など迷うことはたくさんあるのではないでしょうか。具体的な取り組み方法に悩んでいる場合は、ほかの企業が実践しているリスキリング事例を参考にするのがおすすめです。複数の事例を参考に、自社にあった導入方法を探しましょう。
事例には成功のヒントが隠されている
企業のリスキリング事例を参考にすることで、取り組みを成功に導いてくれるポイントを発見できるでしょう。まずは、リスキリングの導入に成功している企業が共通して取り組んでいることを探します。たとえば、以下のような取り組みがあります。
・求める人材の条件を明確にする
・リスキリング後の組織体制を整えておく
・社外の専門家を頼る、継続的に実施する
また、自社と同じスキル習得のためリスキリングに取り組んでいる企業を探して、各企業が独自に行っている取り組みは何か分析しましょう。独自の取り組みであっても、求める人材の条件やスキル、業界、社内の雰囲気、組織体制など共通点がある場合、自社でも応用できる可能性があります。
たくさんの事例を見て自社にあった成功のポイントを探ることが大切です。
事例を元に自社に合う制度を作る
リスキリングを導入する際は複数の事例を参考に、自社の特性に合った制度を構築することが大切です。成功事例をそのまま導入することも可能ですが、目的や組織体制、社内の雰囲気、業界などの違いから、同じ取り組みを行っても必ず成功するとは限りません。
事例はあくまで参考として自社の規模や従業員の属性を鑑みて、応用することが大切です。たとえば、他社事例では集合研修を行っていても、自社がフルリモートワークや在宅勤務を推奨している場合は、オンライン研修の方が参加しやすいといえます。学習方法はさまざまあるため、自社にあった方法の選択が重要です。
国内の企業におけるリスキリング事例を紹介
こちらでは、8つの国内企業の事例を紹介します。
国内企業のリスキリング事例をヒントに、自社での取り入れ方を考えましょう。
日本マイクロソフト株式会社
日本マイクロソフト株式会社では、2019年に人材開発や学習プログラム構築の最高責任者であるCLO(Chief Learning Officer)を設置したことをきっかけにさまざまな自治体や企業とパートナーシップを組み、DX推進やデジタル人材の育成、リスキリングなどに取り組んでいます。また、パーソルイノベーション株式会社と協業して2021年には法人向けオンラインサービス「学びのコーチ」をプラットフォームとして活用を始めました。2022年にはDX推進に必要とされるデジタル人材の育成を目的に技術系人材サービス会社のModis株式会社(現:AKKODiSコンサルティング株式会社)と協業し、以下4つの取り組みを実行しています。
・幅広い対象者に向けてデジタル人材の育成や増強のためのリスキリング支援を行う
・失業者や求職者がスキル開発や就職・転職を支援してもらえる場や、学生が学習を進めるためのプラットフォームを提供する
・Modis株式会社(現:AKKODiSコンサルティング株式会社)やアデコ株式会社での人材育成や受け入れ、就職支援などを行う
・Azureやマイクロソフト製品に関連するオンラインコンテンツを利用した学びの機会を提供する
株式会社日立製作所
株式会社 日立製作所では「デジタル対応力を持つ人材の強化」を課題にリスキリングの導入を進めています。リスキリングを進める一環として、グループ企業の日立アカデミーと連携して日立独自の学習教材を作成しました。2019年には横断的に社員へのデジタル教育に力を入れ始め、同年には約100コースのデジタル専門研修を導入しています。
多彩なコースの中から「AI・データサイエンス基礎」を例にとって概要を紹介します。デジタルトランスフォーメーションを実現するための中核技術としてあるのがAIです。現在の社会は、AI技術が組み込まれたシステム・仕組みをもとにデータを分析する時代に移り変わりつつあります。AI・データサイエンス基礎コースで学習する内容は以下のとおりです。
・ データ・AIの活用領域とその拡がりについて
・データの特長の捉え方から分析プロセスについて
・求められる倫理や関連法規の理解について
日立アカデミーのeラーニングは社内だけではなく社外向けにも発信しています。
富士通株式会社
富士通株式会社では「ITカンパニーからDXカンパニーへ」を経営戦略として、2020年度からはDX人材への進化と生産性の向上を目的に、企業の抜本的改革を進めています。富士通でもリスキリングへの取り組みを進めるために、自社独自の教育プログラムである「Global Strategic Partner Academy」を開発しました。最先端テクノロジーのスキル習得ができるオンライン学習の場を世界中の従業員に対して提供しています。
また、富士通株式会社ではリスキリングの土台となる個人のパーパス支援も行っています。リスキリングの効果を発揮するためには、従業員が自身の存在価値や存在意義についてや、価値観、チャレンジしたいことなど成長ビジョンの認識が重要です。富士通ではパーパスを認識するための「Purpose Carving」と呼ばれる独自のプログラムを実施しています。仲間同士で対話することで自分の今後のキャリアを明確にし、リスキリングへの意欲を高める効果が期待できます。
サッポロビール株式会社
サッポロビールグループは2022年に「全社員DX人財化」の方針を掲げ、DX戦略やDX人財育成への取り組みを始めました。eラーニング講座を開設し、DXやITの基礎知識が学べる全社員ステップや、専門的な内容に踏み込んだサポーターステップなど従業員の知識やスキルレベルに合わせたカリキュラムを提供しています。
最終ステップに位置づけられるリーダーステップでは、DXビジネスデザイナーやDXテクニカルプランナー、ITテクニカルプランナーなどのポジションで活躍できる人材の輩出を目指しています。
2024年以降は社内で自走的に人材育成が行える体制を構築する計画です。その後はリアルだけではなくバーチャルでのコミュニティ形成や育成後の人財が活躍できる場を提供するなど、継続的にDX・IT人財の育成ができる環境の整備が進められています。
ヤフー株式会社
ヤフー株式会社では、AIを業務で活用できる人材を育成すべく全社員を対象としたリスキリングを導入しています。AI人材育成をサポートする「Z AIアカデミア」を創設し、グループ内で知識を共有したり、人材同士が交流を図ったりと、AIを活用したビジネスの協業を推し進めています。
また、従業員の学習機会の場としてAIケーススタディコミッティを開設し、実践力の底上げを積極的に行っていることもポイントです。ノンエンジニアからAIプロフェッショナルまで育成するリスキリング体制を整えています。
社外向けにはYahoo!テックアカデミーを開設し、これまで培ってきた人材育成のノウハウを生かし、優秀なエンジニアを育成するだけではなく転職活動を支援するなど、日本のIT人材不足の課題を解決するための取り組みも進めています。
株式会社三井住友フィナンシャルグループ
銀行業務のオンラインサービス化が進み、既存の対面サービスだけでは業界内で優位に立つことが難しくなってきた昨今、株式会社三井住友フィナンシャルグループは従業員5万人を対象とした「SMBCグループ全従業員向けデジタル変革プログラム」の導入を2021年に開始しました。
デジタル変革プログラムはeラーニングを中心とした教育プログラムで、業務でデジタルツールを活用する方法や、クライアントのDX支援の手段、DX推進に必要なスキルを学習するなどの内容が盛り込まれています。
株式会社小松製作所
株式会社 小松製作所では、2019年度からAI人材教育、2022年度にはDX人材教育を開始しました。従業員の知識レベルに合わせて基礎知識習得を目指す入門教育から、業務やプロジェクトで実践できる課題解決能力を身につける実践教育までさまざまなカリキュラムを設けています。2023年度からは海外現地法人の社員も含めイノベーションを創造するために必要なデザイン思考を学ぶ外部プログラムへの参加も実施しています。
イオン株式会社
イオン株式会社では、2021年6月からDXの入り口となる「イオン DX ラボ」を開催しています。役職やITスキルの有無に関係なく社長から店舗のパート社員まで誰でも同じ情報が得られる場として作られました。基礎情報を学んだあとは、ITやデジタル技術未経験者が身近な業務から課題を見つけ、自身でプロトタイプを作成して実践するプロトタイプ作成トレーニングなどを用意しています。また、成果の追体験や学びを仲間同士で共有できるアカデミーポータルサイトとコミュニティはモチベーションの維持にも役立っています。
リスキリング事例から分かる成功のポイント
リスキリング事例を複数確認していくと、共通して実施している点や独自に取り組んでいる点などがよく見えてきます。こちらでは、多くのリスキリング事例をもとに自社での導入を成功させるためのポイントを5つ紹介します。ポイントを押さえて効果的なリスキリングの取り組みを始めましょう。
どのようなスキル獲得が必要か検討する
リスキリングをするにあたって、まずはどのような人材が必要であるか、どのようなスキルや技術が事業に役立つかなどを明確にします。リスキリングは手段であって目的ではありません。企業や事業を成長させる取り組みの一つとしてリスキリングがあるため、目的を定めず導入してしまうと期待していた効果が見込めない可能性があります。
まずは、必要なスキルや知識を洗い出しましょう。その後、どのような人材が活躍できるかを考え、必要なスキルや人材にあったリスキリング内容を決定していきます。
綿密なプログラムやスケジュールを立てる
リスキリング導入は行き当たりばったりで始めず、綿密なプログラムやスケジュールを作成しましょう。計画と事前準備で結果が決まるというほど準備は重要です。従業員個人の短期目標から企業全体の長期目標まで設定し、具体的なプログラム内容を決めていきます。また、いつまでにどのくらいの人材確保を目指すのかも決めておくことで逆算してスケジュールが立てやすくなります。
リスキリングの導入には大きなコストがかかります。そのため、効率的に結果を出すためにも目標設定からのプログラムの詳細決定、スケジュール調整が大切です。
動画コンテンツやeラーニングを活用して効率的な学びを実現する
リスキリングを導入して従業員に新しいスキルを身に付けてもらう場合、従業員は通常業務をこなしながら学習を進めていく必要があります。そのため、従業員の負担が大きくならないよう働きながら学べる工夫が大切です。まずは、リスキリングに取り組みやすくなるよう制度の仕組みや周囲からの理解を得る必要があります。リスキリングの目的を理解してもらえれば職場での協力体制も整い、学びの時間を設けやすくなるでしょう。
また、場所や時間を問わず学習を進められる動画コンテンツやeラーニングの活用も、効率的に学ぶためには欠かせない方法です。
モチベーションを維持できる取り組み
効果的なリスキリングを実施するためには、従業員のモチベーションを維持する取り組みも必要です。eラーニングやオンライン動画は自分の好きなタイミングで視聴して学習を進められますが、長期的に継続するとなると1人での学習はモチベーションが下がってしまう可能性もあるでしょう。
従業員のモチベーション維持のためにも、定期的に意見交換会や仲間同士が交流できる機会を設けることが大切です。同じ目標に向かっている仲間とコミュニケーションをとることで、モチベーションの向上が期待できます。
長期目線で取り組む覚悟
リスキリングは導入してすぐに効果がでる取り組みではありません。長期的かつ継続的に学習を進めていくことで新たな知識やスキルの習得が可能です。そのため、目標設定やスケジュールを計画する際は、長期目線で取り組む覚悟を持ちましょう。
長く継続することが大切な取り組みですので、導入を検討している方は早めに取り組み始めることをおすすめします。今まで手を触れなかった新しいスキルの習得は簡単なことではありません。人の成長は時間がかかると心得ましょう。
リスキリングの目的を今一度確認しよう
効果的なリスキリングを行うためにも、改めてリスキリングを導入する目的を確認しましょう。なぜ自社でリスキリングに取り組む必要があるのかを再確認し、企業や事業の成功・成長につながるリスキリングの導入を進めてください。
DXに適応し企業が成長するため
デジタル化が急速に進む中、DXの波に飲まれないためにもリスキリングによる知識の習得が重要です。また、デジタルに関する知識を持つだけではなく実際に活用していくシーンも増えてきているため、知識や活用スキルを身に付けてDX社会を生き残り、企業を成長させていくためにも必要といえるでしょう。
従業員の満足度を高めるため
リスキリングの導入により従業員の自己成長をサポートする体制を整えることで、満足度の向上が期待できます。スキルアップの機会を設けることで、「企業が自分のことを考えてくれている」と従業員に思ってもらえるため、モチベーションや満足度が上がると予想できます。
顧客によりよいサービスや製品を提供するため
リスキリング導入により従業員が新たなスキルや知識を身に付けることで、新しい事業を展開していけるようになります。リスキリングにより育成された人材が活躍し、新しい事業の展開や既存事業の成長につながれば、最終的に顧客をはじめとしたステークホルダーのニーズをより満たすことができるでしょう。
まとめ
リスキリングを初めて導入していく際には、他企業の取り組み事例を参考にしましょう。多くの事例を参考にすることで、成功させるためのポイントが見えてきます。具体的なポイントとしては、必要なスキルや人材の条件を明確にする、綿密かつ計画的にスケジュールを立てる、効率的な学習方法を取り入れる、モチベーション維持の仕組みを作る、長期的な取り組みと認識するなどが挙げられます。
個人でリスキリングを進める場合は教育訓練給付制度の活用が可能ですが、なかなか1人でスキル習得を計画的に進めるのは難しいでしょう。企業でリスキリングの導入を検討しているが、具体的にどのようなプログラムに取り組めばよいか迷っている方は、人材育成の専門企業であるトレノケートにご相談ください。プロフェッショナルな講師陣による専門企業としてのノウハウ提供を行い、各企業に合ったリスキリング導入をサポートします。