
キャリア自律とは?個人と組織が共に成長する方法と成功事例
現代の働き方や雇用環境が大きく変化する中で、「キャリア自律」という言葉をよく耳にするようになりました。終身雇用制度の崩壊や働き方の多様化により、自らのキャリアを主体的に形成していくことが求められています。
しかし、具体的に何をすれば良いのか、どのようにキャリア自律を実現すれば良いのか、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、キャリア自律の概念から始まり、その背景、メリット、実践方法まで幅広く解説します。さらに、企業がどのようにキャリア自律を支援しているのか、実際の成功事例も紹介します。
「自分らしいキャリアを築きたい」というビジネスパーソンの方や、組織の一員として社員の育成・組織の成長を目指す管理職・リーダーの方は、必見の内容です。
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キャリア自律とは?

「みなさんはご自身の『キャリア形成』について深く考えたことがありますか?」
企業の人材育成を支援するトレノケート株式会社では、キャリアの研修を実施する際、このような一声からスタートすることがあります。 研修にご参加される方の年齢層やポジションは様々ですが、みなさん「うーん・・・」と首を傾げられることが多いように感じます。
そこでまずは「キャリア自律の定義」と、よく混同されやすい「自律と自立の違い」について解説していきます。
キャリア自律の定義
「キャリア」とは、厚生労働省発表の「キャリア形成を支援する労働市場政策研究会」報告書によると「過去から将来の長期にわたる職務経験やこれに伴う計画的な能力開発の連鎖」と定義されています。それを前提として、「どのように働き、どのように学び、能力を形成していくか」を「キャリア形成」といいます。
そして、「キャリア自律」とは、そのようなキャリア・キャリア形成の概念を基に、「組織の視点からではなく、個人の視点から見たキャリアデザイン」のことを指します。
ここまで読んでいただき、「組織の一員なのに、個人の視点からキャリアデザインって、どういうこと?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
キャリア自律は、個人が自分自身のキャリアに責任を持ち、主体的に意思決定し、行動することです。具体的には、自分の価値観やスキル、強み・弱みを理解した上で、将来のビジョンを描き、それに向かって計画的に行動することを意味します。
キャリア自律では、会社や上司の指示を待つのではなく、自らが主体となってキャリアを形成していきます。そのためには、自己分析や市場価値の把握、スキルアップのための継続的な学習など、能動的な姿勢が欠かせません。
出典:厚生労働省職業能力開発局「「キャリア形成を支援する労働市場政策研究会」報告書」
自律と自立の違い
「キャリア自律」と似た言葉に「キャリア自立」がありますが、その意味は異なります。
|
キャリア自律 |
キャリア自立 |
意味 |
自分で考え判断し、行動すること |
経済的・精神的に独り立ちすること |
在り方 |
他者や組織との関係性の中で成り立つ |
他者に依存せず一人で生きていける状態 |
重視する点 |
プロセスや過程を重視 |
結果や状態を重視 |
キャリア自律は、組織に属しながらも主体性を持って自らのキャリアを形成していくことを指します。一方、キャリア自立は経済的・精神的に独立した状態を意味します。両者は補完関係にあり、キャリア自律がキャリア自立につながるケースも多いでしょう。
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与えられた仕事と自分のキャリアとの方向性に悩む
某システムインテグレーターでエンジニアに従事しているAさんのキャリア自律に関するエピソードです。
Aさんは学生時代から「IT業界で働きたい」という思いが強く、経験を積みながらスキルアップを重ねており、リーダーを打診されるようにもなっていました。しかし、ふと「このままでいいのかな」と悩むことが増えてきたそうです。
そのようなタイミングで、上司とのキャリア面談に臨むことになり、上司から「最近、何か困っていることはない?」と聞かれたAさんは、思い切って今の気持ちを上司に伝えたのです。
「仕事には困っていないのですが、仕事に対する気力というか、 想いというか、少し前と変わってきていて、このままでよいのかなと悩んでいます」
上司はAさんの話を黙って聴いた後で、ふと「Aさんはなんでこの仕事をしてみたいと思ったの?」と聞いてきました。
能動的に自分のキャリアをとらえなおす契機
質問を受けたAさんは、学生時代に感動した出来事を思い出しました。それは、あるイベントに参加した際に聴いたITエンジニアのお話です。
そのエンジニアは、「自分はITエンジニアとしてのスキルを高めたいのではなく、世の中をより便利にするためにスキルを高めたいと思っている。そのために、もっと便利な世の中を想像し、そのために必要な学びは何か?をいつも意識している」ということを語っていました。それを聴いて感動した思いがよみがえったAさんは上司にそのことを告げました。
Aさんの話を聴いた上司は「Aさんは、今の仕事をしていて、その想いと異なると感じているの?」と質問してきました。質問を受けたAさんはそこで初めて「任された仕事ができるようになること」に軸を置いて仕事に取り組んでいたことに気づいたといいます。そして、自身が仕事に対して、どこか受け身だったことにも気づかされたのです。
それからのAさんは「今、取り組んでいる仕事が最終的にどのように世の中に役立つのか?どうすれば、よりユーザーにとって良いものになるのか?」を意識するようになったそうです。
そして、「よりお客様の利便性を高め、また、今後を見据えた提案が進められるように」 と考え、前向きにリーダー職を引き受けることにしたとのことでした。
組織内におけるキャリア形成とキャリア自律のすり合わせ
今回ご紹介したAさんのエピソードのように、組織で仕事をしていると仕事内容やそれに伴うキャリア形成を組織に依存してしまうことがあります。
ただし、「何のために仕事をしているのか?どのようなことに喜びを感じられるのか?」と、自分が大切にしている想いに目を向けることで、仕事の見え方や取り組み方に影響を与えることができるのを忘れてはなりません。
自分の想いと組織が求めるキャリアをすり合わせること。それこそがキャリア自律の第一歩であり、個人と組織がwin‐winの関係性で納得のいくキャリア形成・組織成長に進んでいくための重要なポイントなのです。
- 終身雇用制度の崩壊とジョブ型雇用の普及
- 労働市場の変化と働き方の多様化
- 人生100年時代と長期的なキャリア戦略の必要性
今一度その背景・理由を見直しておきましょう。
日本の雇用慣行として長く続いてきた終身雇用制度は、バブル崩壊以降徐々に崩れ始め、現在は大きく変化しています。
厚生労働省が公表している「我が国の構造問題・雇用慣行等について」(2018年6月)によると、 若年期に入職してそのまま同一企業に勤め続ける者(生え抜き社員)の割合は、2016年時点で大卒正社員の5割程度、高卒正社員の3割程度あり、長期的にも低下傾向とされています。
企業は従業員の雇用を一生涯保障するのではなく、必要な能力・スキルを持った人材を適材適所で活用するジョブ型雇用へとシフトしつつあるのです。
このような環境変化の中で、個人は「会社に雇ってもらう」という受動的な姿勢ではなく、自らの市場価値を高め、主体的にキャリアを形成していく必要が生じています。
デジタル化やグローバル化により、労働市場や働き方は大きく変化しています。リモートワーク、フリーランス、複業・副業など、多様な働き方が広がり、一つの会社に依存しないキャリア形成が可能になっています。
事実、 Visionalグループの株式会社ビズリーチが2023年卒業・修了予定の大学生・大学院生を対象に行った 、将来のキャリアに関する調査によると、7割以上が「企業に依存しないキャリア形成を意識している」と回答したといいます。
また、AIやロボティクスなどのテクノロジーの発展により、これまで人間が担ってきた業務の自動化が進み、求められるスキルも変化しています。このような変化に対応するためには、自らのキャリアを主体的に考え、必要なスキルを獲得していく自律的な姿勢が不可欠です。
出典:【23卒 大学生調査】半数以上が「転職を意識」 7割以上、将来のキャリア「企業に依存せず」
人生100年時代と長期的なキャリア戦略の必要性
人生100年時代と言われる現代では、40年以上の長い職業人生を送ることが当たり前になっています。その間に、産業構造やビジネスモデルは大きく変化し、一度習得したスキルだけでは通用しなくなることも考えられます。
長い職業人生を充実させるためには、短期的な視点だけでなく、長期的なキャリア戦略を立て、継続的に学び続ける姿勢が重要です。自律的にキャリアを形成することで、環境変化に柔軟に対応し、自分らしい人生を送ることができます。
キャリア自律のメリット

キャリア自律が良いものであることは漠然と理解しているけれど、具体的なメリットはあるの?とお考えの方もいるかもしれません。中には、人事・人材育成担当者の方で、キャリア自律の重要性を若手や従業員へ説かないといけない場面もあるかもしれません。
キャリア自律の主なメリットは以下の3つです。
- 個人の成長と市場価値の向上
- 組織への貢献とイノベーションの創出
- 企業の競争力強化と人的資本経営の促進
従業員個人と組織・企業の2つの観点から、キャリア自律に注力することのメリットについて解説していきます。
キャリア自律の最大のメリットは、個人の成長と市場価値の向上につながることです。自分自身のキャリアに責任を持ち、主体的に行動することで、以下のような効果が期待できます。
- 自分の強み・弱みを客観的に把握できる
- 必要なスキルを計画的に習得できる
- 自分の市場価値を高めることができる
- 環境変化に柔軟に対応できる
- 仕事へのモチベーションが向上する
自律的にキャリアを形成することで、自分自身の成長を実感しながら、市場価値を高めていくことができるでしょう。
キャリア自律は個人だけでなく、所属する組織にも大きなメリットをもたらします。自律的な社員が増えることで、組織全体の活性化やイノベーションの創出につながります。
主体的に考え行動する社員は、与えられた業務だけをこなすのではなく、改善点を見つけて提案したり、新しい価値を創造したりする可能性が高まります。また、多様な経験や視点を持つ社員が集まることで、組織の創造性や問題解決能力も向上するでしょう。
企業の競争力強化と人的資本経営の促進
社員のキャリア自律を支援することは、企業の競争力強化にもつながります。自律的な社員が増えることで、環境変化に柔軟に対応できる組織となり、持続的な成長が期待できるのです。
また、人的資本経営の観点からも、社員のキャリア自律は重要といえます。人的資本の価値を最大化するためには、社員一人ひとりが自律的にスキルを高め、能力を発揮できる環境が必要です。企業がキャリア自律を支援することで、人的資本の価値向上と企業価値の向上を同時に実現することができます。
キャリア自律のために必要な要素

- スキル・経験の蓄積と自己研鑽
- マインドセットとキャリアオーナーシップ
- 人脈・ネットワークの構築
上記について、具体的な取り組みも併せて説明します。
スキル・経験の蓄積と自己研鑽
キャリア自律を実現するためには、自分自身の市場価値を高めるスキルや経験を蓄積することが重要です。具体的には以下のような取り組みが効果的でしょう。
- 業界や職種に必要な専門スキルの習得
- デジタルスキルなど汎用的なスキルの向上
- 社内外のプロジェクトへの積極的な参加
- 資格取得やセミナー参加による知識の更新
- 副業や兼業による異なる経験の獲得
自己研鑽は一時的なものではなく、継続的に行うことが大切です。もちろん簡単なことではないですが、日々の業務の中で学びの機会を見つけ、常にスキルアップを意識を持つことから始めてみるとよいでしょう。
マインドセットとキャリアオーナーシップ
スキルや経験と同様に重要なのが、キャリア自律のためのマインドセットです。自分自身のキャリアに責任を持ち、主体的に行動するキャリアオーナーシップの意識が欠かせません。
キャリアオーナーシップを持つためには、以下のような考え方が重要です。
- 自分のキャリアは自分で創るという意識
- 失敗を恐れず挑戦する姿勢
- 現状に満足せず常に成長を求める姿勢
- 他者や環境のせいにしない責任感
- 長期的な視点でキャリアを考える習慣
受動的な姿勢から能動的なキャリア形成へと転換することで、仕事への取り組み方が大きく変わります。自分の本来の想いや目的を思い出し、それに沿った形で現在の仕事を捉え直すことで、モチベーションを高め、より自律的なキャリア形成を実現できるのです。
人脈・ネットワークの構築
キャリア自律のためには、社内外の人脈やネットワークの構築も重要です。多様な人々との繋がりは、新たな知識や情報、機会をもたらし、キャリア形成を加速させます。
効果的なネットワーク構築のためのポイントは以下の通りです。
- 社内の異なる部署の人とも積極的に交流する
- 業界団体や勉強会、コミュニティに参加する
- SNSなどを活用して専門家とつながる
- メンターやロールモデルを見つける
- 自分の知識や経験を共有し、互恵関係を築く
人脈は一方的に頼るものではなく、お互いに価値を提供し合う関係が理想的です。自分が何を提供できるかも考えながら、質の高いネットワークを構築しましょう。
キャリア自律を支援する企業施策とは
社員一人ひとりが個人の視点から見たキャリアデザインを能動的にできるようになれば、個人としての市場価値向上につながるだけでなく、組織・企業としての競争力を上げることにもつながります。
企業・組織が社員のキャリア自律を促進するためにできること・具体的な施策については、主に以下の3つに分類できます。
- 社員のキャリア開発を支援する研修・制度の整備
- メンター制度や社内公募制度の導入
- 副業・越境学習の機会提供
では、一つずつ紹介していきます。
社員のキャリア開発を支援する研修・制度の整備
企業がキャリア自律を支援するためには、様々な研修や制度の整備が必要です。効果的な支援策としては、以下のようなものがあります。
- キャリア開発研修やワークショップの実施
- 自己啓発支援制度(学習費用の補助など)
- キャリアカウンセリングの提供
- 定期的なキャリア面談の実施
- スキル可視化・評価制度の導入
具体例としてのトレーニングプログラム紹介
多くの企業では、キャリア自律を促進するための具体的なトレーニングプログラムを提供しています。例として、以下のようなプログラムが挙げられます。
プログラム名 |
内容 |
期間 |
対象者 |
キャリアデザイン研修 |
自己分析、環境分析、キャリアプラン作成 |
2日間 |
全社員(入社3年目、30歳、40歳など節目に実施) |
スキルアップセミナー |
業界動向、最新技術、必要スキルの習得 |
月1回 |
希望者 |
リーダーシップ開発プログラム |
リーダーシップスキル、マネジメント能力の向上 |
6か月間 |
管理職候補者 |
デジタルスキル研修 |
データ分析、AIリテラシー、プログラミング基礎 |
3か月間 |
全社員(レベル別) |
グローバル人材育成プログラム |
語学力、異文化理解、グローバルビジネススキル |
1年間 |
海外赴任候補者、グローバル業務担当者 |
また、世界で最も優れたIT研修企業20社に選出されたトレノケート株式会社では、お客様のビジネスの成長を支援するため、キャリア自律を促進する豊富なトレーニングプログラムを提供しています。
今後のキャリア展望を描きたい・キャリアについて迷いが生じている方向け
日々忙しく働いていると、自分のキャリアを「ふりかえる」機会はなかなか持てません。 なぜ今自分はここでこの職業についているのかという原点を思い出すことも、 何を大切にして働いているのかという価値観を考えることもめったにないはずです。
この「【PDU対象】「キャリア自律」でこれからを考える ~原点回帰し、「自分軸」を見つけるためのワークショップ~」では、現時点での“自分軸”を明確にすることを目的とします。それにより、自分なりに働く意味・意義をより意識することが可能となります。
仮に今、少し気分が低迷していても、自分で選んでここにいるのだと意識することがキャリア形成には大切です。このワークショップで“明日”以降を考えるきっかけをつかんでください。
▼研修の詳細はこちらから
【PDU対象】「キャリア自律」でこれからを考える ~原点回帰し、「自分軸」を見つけるためのワークショップ~
入社2年目以降のビジネスパーソン向け
ジョブ・クラフティングとは、ビジネスパーソンが自分の仕事にひと匙を加える(創意工夫して変化させる)ことです。
ジョブ・クラフティングすることによって、仕事の効率化や品質向上につながるとともに、仕事を自分事として捉えることにより働きがいの向上にも大きく寄与します。
「【PDU対象】【1Day REAL】ジョブ・クラフティングで働きがいを創り出す方法 ~若手社員の自律につなげるワークショップ~」では、仕事に変化(ひと匙)を加えるジョブ・クラフティングの手法を用い、さまざまなワークを通じて仕事の内容・役割・捉え方を見直し、自律的な取り組み姿勢や考え方、行動を再構築します。
▼研修の詳細はこちらから
【PDU対象】【1Day REAL】ジョブ・クラフティングで働きがいを創り出す方法 ~若手社員の自律につなげるワークショップ~
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小さなことから始める『ジョブ・クラフティング』 ~仕事に“ひと匙を加える”ことで、自分にもまわりにも良い影響を与えた、あるビジネスパーソンの事例~
ITに関わる業務に携わっているビジネスパーソン向け
ITに関わる業務は、納期に追われることやトラブル対応、夜間・休日の対応等、精神的・肉体的に負担が大きい業務が多いことに加え、新しい技術の習得やサービスの実現が常に求められ、それがプレッシャーになってきています。
そのような中、IT人材には自らのメンタル・感情、時間、スキルといったリソースを、自分自身で上手にマネジメントする力が重要となってきます。さらには、キャリア自律が求められる昨今では、これらのリソースを自分自身で考え、高めていくことが必要となります。
「【PDU対象】IT人材のためのセルフマネジメント術 ~自分のリソースを上手にマネジメントする~」では、前向きに業務に取り組むために、感情、効率的かつ効果的な時間の使い方、スキルアップのための取り組み方をマネジメントすること、について学習します。
▼研修の詳細はこちらから
【PDU対象】IT人材のためのセルフマネジメント術 ~自分のリソースを上手にマネジメントする~
リーダーや管理職の方向け
キャリアは会社が与えるものではなく、ビジネスパーソン個々が自分で考え、主体的に開発していく「キャリア自律」の考え方が主流となっています。
しかしながら、キャリア開発の取り組みを部下任せで放置してしまうとうまく進まないケースも多く、上司である管理職が適切に伴走することがあわせて必要です。そのためには、面談などで定期的に部下のキャリア開発を支援することも管理職の役目といえます。
「管理職向けキャリア開発支援 ~部下と対話し、キャリア開発を支援する~」では、部下のキャリア開発支援を管理職がどのように行えばよいかを体験的に学びます。
▼研修の詳細はこちらから
管理職向けキャリア開発支援 ~部下と対話し、キャリア開発を支援する~
▼人生100年時代のキャリア自律に関する研修一覧はこちら
人生100年時代のキャリア自律 | IT研修のトレノケート
メンター制度や社内公募制度の導入
社員のキャリア自律を支援するためには、メンター制度や社内公募制度の導入も効果的です。
メンター制度では、経験豊富な先輩社員が若手社員のキャリア開発をサポートします。メンターからのアドバイスや経験談は、キャリア形成の道標となり、自律的な行動を促進します。
社内公募制度を導入すれば、社員が自らの意思で新たな職務にチャレンジできる機会を提供できます。この制度により、社員は自分の適性や興味に合った部署で能力を発揮でき、キャリア自律の実践につながるでしょう。
副業・越境学習の機会提供
公益社団法人産業雇用安定センターの調査(2023年6月5日~7月31日 )によると、「雇用による副業・兼業」を認める企業の割合は予定も含めて3割 とまだまだ少数ではありますが、近年、副業や越境学習を推奨する企業は増えてきています。 社外での経験は、新たな視点や知識をもたらし、社員のキャリア自律を促進する効果があるからです。
副業や越境学習の機会提供としては、以下のような施策が考えられます。
- 副業・兼業の公式な許可・推奨
- 社外プロジェクトへの参加支援
- 異業種交流会やイベントへの参加促進
- サバティカル(長期休暇)制度の導入
- 社外研修や留学の支援
これらの施策を通じて、社員は多様な経験を積み、視野を広げることができます。そして、その経験を本業に還元することで、企業にとっても大きな価値を生み出すでしょう。
出典:公益社団法人産業雇用安定センター「従業員の「副業・兼業」に関するアンケート調査結果の概要」
キャリア自律を促進する企業の成功事例
現代のビジネス環境において、多くの企業がキャリア自律の重要性を認識し、様々な取り組みを行っています。ここでは、従業員のキャリア自律を積極的に支援している企業の具体的な事例を3つ紹介します。
東京メトロ都市開発株式会社
東京メトロ都市開発株式会社では、不動産開発事業の推進とともに新卒採用を強化する中で、社員が次世代の経営を担えるよう人材育成体制を刷新しました。特に注目すべきは、多様なバックグラウンドを持つ社員が集まる環境の中で、全社的にOJT体制を構築した点です。
※東京メトロ都市開発株式会社のOJT体制
この取り組みの背景には、「若手を育てることで組織の土台を強化したい」という明確なビジョンがありました。東京メトロ都市開発の総務部担当部長である高橋氏は、「既存社員がいなくなった後も会社が成長するためには、若手の育成が不可欠」と語っています。
同社のOJT体制の特徴は以下の点にあります。
- 「育成」ではなく「成長支援」という言葉を採用し、社員の自律性を尊重
- 若手と年長者の世代間ギャップを理解するための研修の実施
- 段階的かつ継続的な研修プログラムによる社内浸透
- 全社的な「若手育成」の意識醸成
総務部の坂詰氏は「将来的には、教育に携わる全ての社員も成長することができる『共育(きょういく)』の環境を目指している」と述べており、キャリア自律を促進する文化づくりに注力していることがわかります。
出典:東京メトロ都市開発株式会社 | IT研修のトレノケート
株式会社デンソー
自動車関連製品の製造大手である株式会社デンソーは、ハードウェア技術者からソフトウェア技術者へのキャリア転進を支援するリスキリングプログラムを導入し、社員のキャリア自律を促進しています。
※株式会社デンソーのキャリアイノベーションプログラム
デンソーのソフトキャリア支援室室長である広瀬氏によれば、「単に技術を学ぶだけでなく、社員が自らのキャリアを長期的視点で考え、モチベーション高く取り組むこと」を重視しています。同社の取り組みの特徴は次の通りです。
- キャリアイノベーションプログラムの一環としてのリカレント教育
- ソフトウェア技術研修前に「キャリア研修」を実施
- 「キャリアワークシート」を活用した上司との効果的な対話支援
- 社員の不安に寄り添うための丁寧なフォロー体制
特に注目すべきは、30〜50代の社員を対象に、キャリアの転換期に改めて自身のキャリアを考える機会を設けている点です。ソフトキャリア支援室担当課長である増子氏は「キャリアワークシートは、異動先の新しい上長との面談でも活用され、将来のキャリアの方向性を伝える手段として非常に役立っている」と効果を語っています。
サントリーシステムテクノロジー株式会社
サントリーグループのITサービスを担うサントリーシステムテクノロジー株式会社は、「全社員が主体的にキャリアを構築し、自律したキャリアプランのもと積極的に組織に貢献してほしい」という方針のもと、年代別のキャリア支援に取り組んでいます。
同社の特徴的な取り組みは、50代のITエンジニア向けキャリアプラン・ワークショップです。管理部主査の瀬戸山氏によれば、このワークショップは以下のような特徴を持っています。
- クリエイティブ要素を取り入れた非日常感・遊び心あふれる内容
- 自伝作成などを通じた自己理解と将来ビジョンの具体化
- 世代特有の課題に対応したカスタマイズされたアプローチ
- 実施後の個別フォロー面談による継続的支援
このワークショップは、「自分の技術や経験が今後も通用するのか不安」という声に応えるもので、定年後の働き方に向けた前向きな考え方を促進しています。管理部主任の村岡氏は「シニアのキャリアについて会社が真剣に考えているというメッセージが自然に伝わった」と効果を評価しています。
出典:50代社員向けキャリアプランワークショップを実施 | 人材育成のトレノケート
キャリア自律は企業の支援や周囲の協力を得ながら実現しよう
キャリア自律の実現には、企業と個人の協力が不可欠です。企業は様々な支援制度や機会を提供し、個人は主体的に行動することで、相乗効果が生まれます。
企業は単に制度を整備するだけでなく、キャリア自律を重視する組織文化の醸成も重要です。上司や経営層が率先して自律的なキャリア形成の重要性を発信し、実践することで、組織全体に浸透していきます。
キャリア自律は「完全な個人主義」ではなく、企業の支援や周囲の協力を得ながら実現されるものです。企業のビジョンや戦略との整合性を図りつつ、自分自身のキャリアを形成していくバランス感覚が重要です。
自律的なキャリア形成を成功させるためには、以下のポイントを意識しましょう。
- 自分の価値観や強みを理解する
- 市場動向や環境変化に敏感になる
- 短期的な成果と長期的な成長のバランスを取る
- 周囲との対話を通じて視野を広げる
- 計画だけでなく行動に移すことを重視する
キャリア自律は一度達成して終わりではなく、継続的な学習と成長のプロセスです。環境変化が激しい現代では、常に新しい知識やスキルを習得し、自分自身をアップデートし続けることが重要です。
「学び続ける力」こそが、キャリア自律の根幹であり、長い職業人生を充実させるための鍵となります。日々の業務の中で学びの機会を見つけ、小さな一歩から始めることで、自律的なキャリア形成への道が開けるでしょう。
キャリア自律の実現は簡単ではありませんが、一歩ずつ着実に進めていくことで、自分らしいキャリアを築くことができます。ぜひ今日から、自律的なキャリア形成に向けた第一歩を踏み出してみてください。
▼併せて読みたい記事
セミナー録画公開「人生100年時代のキャリアづくり」~企画者として伝えたいこと~|トレノケート公式ブログ
