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「即戦力ルーキー」はすぐに活躍する人材か?~組織に馴染み、適応していくプロセスが必要不可欠~

みなさん、年末年始はどう過ごされましたか?私はほとんど外出をせず、自宅でテレビのスポーツ番組やお笑い番組を見たりして過ごしていました。年末年始のスポーツはラグビー、サッカー、格闘技等が盛んですが、2月になるといよいよ私が一番好きなプロ野球のキャンプが始まります。キャンプの時期、スポーツニュースでよく取り上げられるのが、新入団、特に新人選手の話題です。今年は私がひいきにしている某球団が、ドラフト会議での抽選の末、大学生の強打者を獲得し、非常に期待しています。

ところで、スポーツニュースで新人選手に対してよく使われる言葉に、“即戦力ルーキー”という言葉があります。みなさんは、“即戦力”と聞いて、どのくらい早く活躍する選手を想像しますか?


“即戦力”という言葉の認識は異なる

一般企業においても、新卒入社や中途入社の社員に対して、“即戦力”という言葉を使って期待をかけるケースがよくあります。新入社員研修を担当していると、大学時代に専門技術のスキルをある程度修得済みの新入社員について、「彼/彼女は即戦力なんです」と期待を込めて話されている人事担当者の方もいらっしゃいます。新入社員本人にもそのような話は伝わっていることも多く、彼/彼女たちも「自分は即戦力なんだ」と認識している様子がうかがえる時があります。

期待をかけること(かけられること)自体は良いことではあるのですが、注意すべき点もあります。新入社員が考えている即戦力のレベルと、人事担当者や上司/先輩が考えている即戦力のレベルがあっていない可能性があることです。


​​​​​​​先程のプロ野球のケースでは、即戦力というと入団後すぐに活躍している状況を想像する人が多いでしょう。新入社員も、配属後すぐに現場でバリバリと働いていないといけない、1年目でも重要な仕事を任される、と考えます。一方の人事担当者や上司/先輩はどう考えているでしょう。新入社員は配属後すぐにバリバリ活躍してくれる、と考えているかというと、そうではありません。


認識が異なることで受けるリアリティ・ショックに注意

多くの企業では、いくら即戦力と期待する人材でも、1年目はまわりの人たちと馴染み、会社の仕組みや仕事の概要を覚えて、2-3年目から主業務の戦力になってくれればよいと考えている場合がほとんどです。また、現場では一番若い新入社員には議事録作成や定常業務を割り当て、仕事の仕組みや概要を知ってもらい、まわりの人たちとの関係を構築する等の土台作りが重要としています。

この認識が新入社員に伝わっていないと、新入社員は「即戦力と言われていたのに議事録ばかり、自分は能力がないんだ」「自分のやりたいことができない」「思っていた環境と違う」と思ってしまい、仕事への意欲が削がれてしまうことにつながりかねません。このように入社・配属前に思い描いていた状況と配属後の状況が異なることによりショックを受けることをリアリティ・ショックといい、リアリティ・ショックが大きいと早期退職してしまう危険性が高まることがわかっています。

戦力になる前に必要なこと

リアリティ・ショックを和らげるためには、人事担当者や上司/先輩は新入社員としっかりコミュニケーションをとり、どのくらいで戦力になってもらいたいかといった即戦力の定義や期待値のレベルを合わせることがまず必要です。さらに仕事の仕組みや概要を知り、まわりの人たちとの関係を構築する等の土台作りの期間が必要で、人事担当者や上司/先輩はそのプロセスをサポートすることが求められます。


このような組織に馴染み、適応していくプロセスのことを「組織社会化」といい、新入社員はもちろんのこと、新入社員以上に即戦力として期待されるケースが多い中途入社の社員にも必要なことです。


都川 信和(みやこがわ のぶかず)

都川 信和(みやこがわ のぶかず)

トレノケート株式会社 講師。国家資格キャリアコンサルタント/BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ。SIerにて、システムの開発・運用、データセンター・クラウドサービスの企画・設計、運用コンサルティング、サービス部門・運用部門のマネジメント等、20年間で数多くの現場に幅広い立場で携わってきた経験を持つ。現在は、ビジネススキル研修、ITスキル研修、新入社員研修を担当。 研修では、「受講者の方々が前向きに学ぶことができ、学ぶ意欲を高められるような場づくり」を第一に考え、対話の中で受講者の方が自ら気づき、考えるようなアプローチ、ファシリテーションを得意とする。著書に、トレノケート・田中淳子との共著『ITエンジニアとして生き残るための「対人力」の高め方』(日経BP社)がある。

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