新入社員が生成AIを使って業務を進めることは、もはや珍しいことではなくなりました。調べる、考えを整理する、作業の進め方を確認する。そうした場面で、生成AIは新入社員の心強い相談相手になりつつあります。
一方で、AIの出力を十分に理解しないまま成果物に取り込むと、OJTトレーナーは「どこまでが本人の考えなのか」「何を理解していて、何に迷っているのか」を把握しづらくなります。
本記事では、生成AI時代の新入社員育成において、報連相にどのような観点が加わるのか、そしてAIを新入社員の成長につなげるためにOJTトレーナーがどう支援すればよいのかを考えます。
目次
はじめに
本題に入る前に、まずOJTの大前提としてお伝えしたいことがあります。
新入社員のOJTに際して、企業では多くの場合、OJTトレーナーという先輩社員を一人割り当てます。そのOJTトレーナーがすべきことは、一人で頑張ることではありません。周囲を巻き込みながら、新入社員の成長を支援することです。これは大事なことなので、このコラムでも繰り返し述べてきましたが、今回も再度強調しておきます。
近年では、その「周囲」に生成AIが入ってきたと感じるので、このコラムでは「生成AI」と「OJT」について考えていきます。
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OJTの現場に入ってきた生成AI
新入社員の成長を支える「周囲」の存在は、先輩社員やOJTトレーナーだけではなくなりつつあります。現在は、新入社員の育成を助けてくれる「周囲」に生成AIも含まれるようになりました。
従来であれば先輩に質問し、教えてもらっていたことを生成AIに尋ねる。自分で調べてもどうにもならず行き詰まり、恐る恐る先輩に相談する。やってみた結果うまくいかず、「今、声を掛けても大丈夫かな」と様子をうかがいながら先輩のもとへ駆け込む。
そうしたことが日常だったOJTの現場に生成AIが入り、
「先輩に聞く前に生成AI」
「先輩に相談するより生成AI」
「困った時は生成AI」
となっている新入社員も多いのではないでしょうか。
生成AIネイティブとも言える今の新入社員は、就職活動をはじめ、さまざまな場面で生成AIを活用することに慣れています。
一方で、忙しそうな先輩に声を掛けるタイミングを図ることは難しく、テレワーク環境ではなおさら「質問」や「相談」を躊躇してしまうのも理解できます。
「まずは生成AIに相談しよう」と考えるのも当然でしょう。
生成AIは新入社員の成長を代わりに支えてくれるわけではない
では、生成AIの活用が進めば、OJTトレーナーの負担は減るのでしょうか。
一見するとそう思えます。しかし実際には、かえって仕事が増えているというOJTトレーナーも少なくないように感じます。
その理由の一つが、新入社員自身が生成AIの回答を評価することの難しさです。
新入社員は、知識もスキルも実務経験もほとんどない。あったとしてもまだそれは浅い状態です。そのため、自分でも十分理解できていないことを生成AIに尋ね、返ってきた回答の良し悪しを判断できないことがあります。
すると、自分が業務指示を受けている成果物に「生成AIの出力内容」をそのまま取り込み、「一応、成果物、できました。ただ、一部、分からないところもあるので教えてください」などとOJTトレーナーに送ってきたりします。
生成AIの出力を十分に吟味しないまま成果物に組み込まれると、先輩は「これは何だろう」「どこまでが本人の考えで、どこからが生成AIのアウトプットなのだろう」と戸惑います。
新入社員に尋ねると、「ある程度は自分で考えましたが、生成AIのアウトプットも生かしています」などと言い、OJTトレーナーとしては、「新入社員の理解度をどう把握し、このアウトプットに対しては、何をどうフィードバックすべきか」をさらに考える必要が生じます。
結果として、「AIを使うのはいい。でも、自分でもよく分かっていない状態でAIに聞いて、その答えを自分で評価できないのであれば、まずは私に相談してほしい」と思ったりするのです。
中途半端に生成AIのアウトプットが新入社員の成果物に紛れ込んでくると、それを解釈するのに余計に時間がかかるという事態も起こり得るわけです。
新入社員の成長につながるAIの使い方とは
もちろん、一概に生成AIを使うことがダメだと言っているわけではありません。生成AI活用については、企業ごとのルールはあると思いますが、生成AIの存在自体は、もう当たり前であるという前提で話は進めます。
「生成AIが共にある」状態はもはや誰にとっても当たり前です。便利なツールを自分の能力の拡大のために活用するのは効率化のためにも有効な方法です。
ただし、生成AIの使い方には注意が必要です。生成AIに答えを求め、その結果をポンとOJTトレーナーに出してくる、といった使い方では、仕事の成果としても不十分ですし、何よりも新入社員自身の成長にはつながりにくいでしょう。
生成AIに尋ねるべきなのは、
「私は何を理解しておけば、この仕事に取り組めるのだろう」
「こういうことを調べるには、どのような作業が必要なのだろう」
といった、学び方や考え方、仕事の進め方ではないかと思います。
答えを得るためだけではなく、自分の理解を深めるために生成AIを活用する。そのような使い方ができれば、生成AIは新入社員の成長を支える存在になるはずです。
生成AI時代の報連相では、AIをどう使ったかも共有する
生成AIの活用が広がることで、OJTにおける報連相にも新たな観点が加わります。
私は2003年から企業のOJT支援に携わってきました。まもなく四半世紀です。
OJTトレーナーの悩みは、いつも「新入社員の報連相が期待と違う」で、新入社員の悩みは、「報連相しているつもりなのに、報連相がなっていないと指摘される」でした。
報連相に加わる「生成AIをどう使ったか」という観点
生成AI登場以前の課題は、たとえば次のようなものです。
- 報連相する内容が不十分(What)
- 報連相の手段が違う(How)
- 報連相する相手が違う(Who)
今後はこれらに加えて、
「生成AIをどう使ったのか」
「自分ではどこまで理解していて、どうしたいと考えた上で生成AIの結果を生かしたのか」
といった観点も必要になってくるでしょう。
生成AIは使えばよい。けれど、それはあくまでも道具です。使い方を工夫しないことには、新入社員自身の成長につながらないだけでなく、OJTトレーナーの負担を増やすことにもなりかねません。
AIが当たり前の時代に、私たちは人の成長をどのように支援していくのか。その答えを今も考えているところです。
なお、このコラムは、「草稿」2000文字程度を自分で書いた上で、Copilot(生成AI)に原稿を丸ごと投入し、「こういう趣旨でこういうメッセージを伝えたい」を入力、5回ほどやり取りした上で、Copilotに全文を書き換えてもらいました。その書き換えられた全文を再度、自分自身の語彙、考え、ニュアンスなどを加味して、仕上げています。
新入社員の生成AI活用とOJT支援に関する関連コンテンツ
生成AIの活用が広がる中で、新入社員の報連相やOJT支援のあり方も少しずつ変化しています。AIをどのように使うかだけでなく、本人がどこまで理解し、何に迷い、どのように仕事を進めようとしているのかを、周囲が把握しながら支援することが大切です。
新入社員育成やOJT支援の進め方が気になる方は、人材育成お悩み相談室よりお気軽にご相談ください。
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