「自分のキャリアを自分で考え、自発的に能力開発もするそんな人材に育てたい。」という声を聴く一方で、「キャリアを考える研修やワークショップ、重要ですよ。」と提案すると、「うーん、社員が目覚めちゃって、会社辞めたら困るんですよね。」と渋い顔をされることがたまにあります。
キャリア自律をしたら、本当に会社を辞めてしまうのでしょうか?
ご自身に置き換えて考えてみてください。
皆さんは、「キャリアのことを自分で真剣に考え、変化する未来に備えて、これを勉強しよう、あれを学び直そうと思った」とします。その時、「ここまで考えたし、学んだから、会社を辞めよう」とすぐに思うものでしょうか?
その選択肢はゼロではないでしょうが、「自分のキャリアイメージが明確になったし、勉強すべきことも分かったし、少しずつ学び直しもしている。これで今の仕事はもっと楽になったり、新しいことに挑戦したりできるな。」と、今いる職場でのさらなる活躍・貢献を真っ先に考えるような気がします。
キャリア自律がいきなり離職行動の引き金になる可能性は、ご自身に置き換えてみれば、さほど多くなさそうだと分かるはずです。
実際にこのことを研究した論文があります。
「キャリア自律が組織コミットメントに与える影響」 堀内泰利(日本電気株式会社)/ 岡田昌毅(筑波大学大学院)
こちらの論文によると、「キャリア自律をする」と「キャリア充実感」につながり、その結果として「情緒的コミットメントが高まる」とのこと。「情緒的コミットメント」とは、「この会社、この組織に貢献したい」と自ら思うことを指します。
一方、「キャリア自律をする」と「功利的コミットメント」は低くなるとも書かれています。「功利的コミットメント」は「辞めると損だ」といった損得勘定でその組織に残ろうとする気持ちのことです。
ということは、組織が従業員の「キャリア自律」を促進することは、個人の職務への満足感を高めるだけでなく、結果的に、組織の成果達成にも貢献しようと前向きな気持ちを引き出すことにつながると言えそうです。
これ、いいことではないですか?
キャリアを自分で考えるようになると、そのために必要な知識やスキルを学習したり、経験を積んだりして、能力向上を図るという行動に移るでしょう。その向上した能力を活かす場は、まずは「今の職場」でしょう。
もし、「ここじゃない」と思ったとしたら、能力を活かす場がない、能力を活かす場を求めて他社に行ってみよう、という理由が考えられます。
であれば、「キャリア自律したら社員が退職してしまうのでは?」を心配するのではなく、キャリア自律した社員が活躍したい場、そして、能力を発揮できる仕事を創出していくのがマネジメント側の責任だと思うのです。
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