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プロジェクトマネジメントにおけるステークホルダーとの「握り」とは?認識相違による炎上を防ぐ考え方

作成者: 横山 昇(よこやま のぼる)|2026-06-19
プロジェクトを進める中で、顧客をはじめとするステークホルダーと認識を合わせたつもりでも、前提や言葉の捉え方にずれが生じることがあります。その小さなずれがプロジェクト後半で表面化し、大きなトラブルや炎上につながることも少なくありません。
 
本記事では、筆者が経験したコールセンターシステムのリプレースプロジェクトを例に、ステークホルダーとの共通理解を形成すること、すなわち「握る」ことの重要性について考えます。
 
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目次

プロジェクトマネジメントにおけるステークホルダーとの「握り」

これまで3回のコラムでは、プロジェクト・マネジャーの育成を主たるテーマとして、書き連ねてきました。
 
▼前回までのコラムはこちら
今回は、もう少し現場寄りの話をしたいと考えています。
 
プロジェクトの現場は複雑で、また1つとして同じプロジェクトは存在しない上、「これをやっておけば絶対にプロジェクトはうまくいくはずだ」あるいはその反対に「これをやったら間違いなくアウトだ」という絶対的なポイントは存在しません。
 
しかしステークホルダー、特に顧客との「握り」の甘さに起因する失敗というのは、数多くあるのではないでしょうか。ここで言う顧客とは、プロジェクトで生み出した成果物を利用する社外の顧客や社内のユーザーなど、幅広い意味合いを包含しています。
 
各々のステークホルダーがおかれている立場や前提となる知識や経験が異なる以上、やはり一筋縄ではいかないところがあります。
 
2026年4月に日本語版の暫定版が出版された、PMBOK®ガイド第8版でも、ステークホルダーとコミュニケーションについては、それなりにページ数を割いて記載しています。

その中では、ステークホルダーとの関係づくり(エンゲージメント)や、コミュニケーションについて、汎用的な技法や作成すべきアウトプットがまとめられているので、プロジェクトマネジメントに携わる皆様には、ぜひお手に取ってご確認いただきたいです。
 
しかし、人間を相手にする以上、「(PMBOK®ガイドに書いてあるような)システマティックな進め方はできず、さまざまな誤解や行き違いが生じる余地が多分にある」というのもまた事実です。
 
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ステークホルダーとの認識相違で炎上しかけたプロジェクト事例

以前私が担当していたプロジェクトでこのようなことがありました。そのプロジェクトはコールセンターのシステムをリプレースするプロジェクトだったのですが、他のあらゆるプロジェクトと同様、運用開始後に数値的なデータを取得することが非常に重要になります。
 
具体的には「コールセンター全体として、1日に何本の電話を取ることができたか」「1回当たりの通話時間は平均何分だったか」「顧客の平均待ち時間はどの程度であったか」といったデータになります。これらのデータをまとめて、統計的なレポートとして顧客に提供するのですが、そこで顧客側と我々の間で、認識相違が生じました。

顧客と認識がずれていた「放棄呼」の範囲

問題となったのは放棄呼をどうカウントするかです。
 
放棄呼のカウントとは簡単に申しますと、「(顧客が)電話をかけたのに、(コールセンター側で)応答できなかった数」をカウントすることです。当時私が担当していたコールセンターの仕組みでは、我々が自前で取得できるのは「コールセンターまで到達することができたが、オペレーターが応答できなかった数」でした。
 
しかし、たとえば20本の電話回線があったとして、その20本がすべて埋まっていたために、コールセンターに到達しなかった電話も、当然のことながら存在しうるわけです。ここまで含めた数を知りたければ、当時は電話会社に問い合わせをするしかありませんでした。
 
もうお分かりかと思いますが、我々が提供できるデータは「コールセンターまでは到達できていたが、オペレーターが応答できなかった数」なのに対して、顧客が知りたかったのは「それに加えて、コールセンターまで到達できなかった数も含めた全量」だったのです。
 
当たり前と言えば当たり前の話なのですが、その認識合わせが十分に行われないままプロジェクトが進んでしまい、プロジェクトの後半になってその認識違いが露見し、大問題になりかけました。

プロジェクトの炎上を防ぐために早い段階で共通理解を形成する 

この事例を通じてお伝えしたいのは、「ステークホルダー間でしっかりと認識を合わせること」の重要性です。
 
この例では「放棄呼をどう捉えるか」というそもそもの前提が合っていなかったためにトラブルが生じたわけです。前提が合わない理由は、必ずしも単純な確認漏れだけではありません。

「仕様が複雑で説明が難しい」とか、あるいはもっと単純に「これはあまり伝えたくない」といったものまで、この手の話は枚挙にいとまがないと思います。
 
しかし、そういったものを含めて、粘り強く説明し、言葉による説明だけでは事足りないのであれば、図解の技法なども使って、しっかりと共通理解を形成すること、すなわち「握る」ことが、重要なのではないでしょうか。
 
「これはあまり伝えたくないな」「これは説明しても分かってもらえないだろうな」ということが現場にはたくさんあることは、もちろんよく分かります。
 
しかし、それらを曖昧にしたままプロジェクトを進めた結果、後から大きなトラブルになるよりは、苦労があったとしても、早い段階で「握って」おいた方が、よい結果につながることが多いのではないでしょうか。

プロジェクト現場の課題に応じた一社向けカスタマイズ研修

ステークホルダーとの認識合わせや合意形成は、知識として理解するだけでは、実際のプロジェクトで活用することが難しいテーマです。相手の立場や前提を踏まえて説明し、認識のずれを確認しながら共通理解を形成するには、実際の業務を想定した演習や対話を通じて学ぶことが重要です。
 
トレノケートでは、企業ごとの課題や人材育成の目的に応じて、一社向けのカスタマイズ研修をご提供しています。ご相談内容によっては、本記事で取り上げたようなテーマに関連する内容を研修に取り入れられる場合もあります。
 
まずは現状の課題や育成したい人材像をお伺いし、どのようなご支援が可能かをご提案します。プロジェクト・マネジャーやプロジェクトメンバーの育成をご検討の際は、お気軽にご相談ください。
 
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