この記事は2014年5月20日に作成されました。 |
「マイグレーション」という言葉から、皆さんは何を想像するでしょう。
おそらく、このブログを読んでいる方は「仮想マシンの移動」や、「サーバーハードウェアの変更や統合」「ユーザーアカウントを別ドメインに移動」といったことを思い浮かべるのではないかと思います。
Windows移行特集記事一覧
【1】 Windowsのマイグレーションと言えば 【2】 Active Directoryマイグレーション:アップグレード準備 【3】 Active Directory マイグレーション:アップグレード手順 【4】 Active Directory マイグレーション:ADMT 【5】 ユーザー・グループの移行 【6】 サーバー役割の移行
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英語の「migration」は、ごく一般的な言葉で「人や動物が移動する」ことを意味します。たとえば、アフリカ大陸で見られる「ヌー(Gnu)の大移動」は「The Great Migration」と呼ばれるそうです。UNIXからLinuxに移行することではありません。
▲ヌー(大移動のシーズンではありません)
ソフトウェアでもハードウェアでも、とにかく「移動」すれば、それは「マイグレーション」です。必要以上に身構えることはありません。
一般に、英語は造語能力が低いため、日常用語を流用して専門用語を作ります。これは直感的に理解しやすい反面、正確に理解しないままその言葉を使ってしまう可能性もあります。
逆に、日本語は漢字やカタカナを使って新しい言葉を簡単に作るため、最初は取っつきにくいのですが、正確に理解しやすいという利点があります。
さて、最近Windows業界で話題になっている「マイグレーション」は2つあります。
1つは「ライブマイグレーション」です。Windows Server 2012からはTCP/IP接続さえできていれば、フェールオーバークラスターがなくても、稼働中の仮想マシンを別の物理マシンに移動できます。ライブマイグレーションは、1日の教育コース「Hyper-Vの構成と管理 ~Windows Server 2012 R2対応~」で扱っています。
もう1つはWindows Server 2003のサポート期限切れに伴う移行です。
2015年7月のWindows Server 2003のサポート終了まであと400日余りとなりました。Windowsのマイグレーションをスムーズに行うためには、早めに検討を開始しておくことが重要です。
今回から隔週で「Windows移行特集」としてWindowsのマイグレーションについてご紹介します。ぜひ参考にしてください。
Windowsのマイグレーションは、以下の4つの内容を含みます。
これらの大半を実行するのが、Active Directory移行の万能ツールADMT(Active Directory Migration Tool)です。
既存のActive Directoryドメインを、Windows Server 2012 R2ドメインにアップデートし、新しい機能を有効にします。
既存のドメインをアップグレードする場合と、新しいドメインを作って必要な情報を移行する場合があります。一般に「マイグレーション」と言った場合は、新しいドメインを作ってアカウントを移行することを意味しますが、既存ドメインをそのままアップデートする場合もいくつかの注意点があります。
既存のユーザーアカウントを、新しいドメインにパスワードを含めて移動します。
この時、ユーザーのパスワードを移行する場合は追加のオプション(PES: パスワードエクスポートサーバー)が必要です。
新しいドメインに移行するので、Windows 2000当時によく考えずに作ってしまったドメイン構造を、この機会に一新できます。
また、ユーザーの構成情報(ユーザープロファイル)を、新しいコンピューターに移行する作業も必要です。
既存ドメインのメンバーとなっているコンピューターを、新しいドメインに移動します。ドメインの付け替えとセキュリティの再構成が主な作業です。
ファイルサーバーなどの役割を、新しいサーバーに複製します。
Windows Serverの標準機能である「サーバー移行ツール」を使うと簡単に移行できます。サーバー移行ツールはPowerShellで実装され、簡単に利用できます。
「Windows環境マイグレーション実践」では、これらのすべてを扱っています(ただし、ユーザープロファイルの移行についてはあまり重視していません)。
想定している移行元は、Windows Server 2003/2008およびWindows XP/Vistaで、移行先はWindows Server 2008R2/2012/2012 R2およびWindows 7/8ですが、Widows Server 2008 R2からWindows Server 2012 R2への移行でも役に立つでしょう。