IT・ビジネススキル・人材育成の情報を掲載 | 人材育成のトレノケート【公式ブログ】

相手の成長を願ってフィードバックする

フィードバックとは、相手の行った行動や態度について指摘(情報提供)することです。

フィードバックを上手く活用すると、部下や後輩のやる気を引き出しつつ、良い点をさらに伸ばし、改善点を自ら直してもらうことが出来るようになります。

コーチングの研修で「どうしたら、コーチングのスキルを上達させることができますか?」というご質問を受けた際も、「フィードバックを学ぶことから始めると効果的です」とお答えしています。
 

プロテニスでの効果的なコーチング

テニストーナメントのテレビ中継を見ていて、コーチングが効果的に行われている場面に出会いました。

日本人選手が1セット目を落とした直後、審判にコーチングを要求(※)。コーチと選手との短いコーチングの会話の後、その選手の動きが見違えるように良くなり、残りの2セットを連取して見事逆転勝ちをおさめたのです。
※通常テニスでは選手がコートに入った後は一切のコーチングは認められていませんが、そのトーナメントでは例外的にオンコート・コーチングというルールが適用されていました。

では、その短いコーチングの中でどのような会話が行われたのでしょうか?
情報を集めてみると、コーチはその選手の良い時の状態(理想のプレースタイル)と、現状のプレーとのギャップについて「コーチからは、このように見えていますよ」という情報提供をしたそうです。
そのことをきっかけに、選手自身が改善ポイントに気づいて、自らプレースタイルを良い状態に戻すことができたのです。

これが、コーチングのスキルの1つ、フィードバックです。
すでに選手の中にあった答えを、コーチが相手の理想と現状とのギャップについて感じたことを伝えることで引き出した例です。

 

フィードバックの3つのポイント

フィードバックは、相手の成長を願って行う行為です。単に「良い」、「悪い」の評価を伝えることが目的ではありません。

フィードバックは鏡の役割を果たします。その人の行動や態度の良い点、改善点の両方について「他人の目からは、このように見えている」と情報を提供し、自らの行動や態度が他人にどんな影響を与えているかについて気づいてもらうために行います。自分が普段どのような行動や態度を取っているのかや、そのことが他人にどのような影響を与えているのかは、自分自身ではなかなか気づくことができないからです。

特に改善のフィードバックの場合は、受ける側が、「批判された」、「攻撃された」と感じないように、受け取りやすい表現を心がける必要があります。

 

<受け取りやすいフィードバックのポイント>

  1. 相手の行動や態度について、観察できた事実を具体的に伝える:観察された行動について伝える、憶測で言わない
  2. 適切なタイミングで伝える:行動の直後に伝えると効果的である
  3. Iステートメント(アイ・ステートメント)で伝える:「私」を主語にして自分の感じたことを率直に伝える。「相手」を主語にして決めつけた言い方をしない


<上記の3つのポイントを反映した例>
NGの例:「先週の客先でのプレゼンテーションだけど、あれではぜんぜん駄目だね。君はいつもああいうプレゼンしているんじゃないの。(あなたは)なんで質問への回答があんなに長くなるんだろう?」


OKの例:「今日のプレゼンテーションだけど、顧客とアイコンタクトを取って、語りかけるように話していたのは良かったよ。一方で、最後の質疑応答の部分は、回答が長くて結論が分かりにくかったように(私は)感じたよ」

 

効果的なフィードバックの前提

部下や後輩のやる気を引き出しつつ、良い点をさらに伸ばし、改善点を自ら直してもらうためには、相手の行動や態度を良く観察して、継続的にフィードバックすることが大切です。もちろん、前提として、相手とラポール(信頼関係)を構築することが不可欠です。
皆さんの職場でも、お互いの成長を願って、相手にとって受け取りやすいフィードバックを交換することを意識してみませんか。

関連記事:コーチングの基本「ラポール」で、相手の本音を引き出そう

 

関連コースのご案内

「ビジネス・コーチング ~能力とやる気を高める5ステップモデル~」では、効果的なフィードバックの与え方、受け取り方について、最初のステップとして学んでいきます。このコースでは、はじめてコーチングを学ぶ方を対象に、基本スキルを段階的に学んでいきます。

研修では、コーチングのロールプレイをしている時に、オブザーバという役割があります。オブザーバ役の方には、その会話の中でコーチがどのようにスキルを使っているのかを良く観察して、後でフィードバックしていただきます。