IT・ビジネススキル・人材育成の情報を掲載 | 人材育成のトレノケート【公式ブログ】

セミナー後記:「守りのテレワーク」から「成果を高めるテレワーク」へ

2020年も残すところわずかになりました。

毎年恒例の「今年の漢字」ですが、自身に置き換えると「変(変化、変動、大変…)」や、「苦(苦境、苦難・・・)」を挙げられる、という方も多かった一年かもしれません。

ご存知の通り、2020年は新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、「新常態」に舵を切らざるを得ない業態も多く、経営層にとっても現場で働く人にとっても、大変な1年だったと思います。

そんな中、去る12月2日、【「守りのテレワーク」から「成果を高めるテレワーク」へ】と題しまして、無料セミナーを実施いたしました。

幸いにも、「役に立った」というお声を多数頂戴できたとのことで、ご参加いただきましたみなさまには、この場を借りてお礼申し上げます。

と、共に、改めて「セミナー後記」として、セミナーでお話した内容を簡単にふりかえりながら、「テレワークでもできる」から、「テレワークだからこそできる」に向けた、前向きなお話を記させていただきたいと思います。

テレワークを取り巻く状況

セミナーでは、まず、テレワークを取り巻く現状についての共有から話を進めました。

毎日のように様々な報道発表がされていますが、セミナーでは、公的な発表として厚生労働省から発表された、「第4回『これからのテレワークでの働き方に関する検討会』(11月16日発表)」の資料を参考にしています。

その資料から、いくつかの統計が発表されていますので、以下にまとめます。

■テレワークの導入・実施状況

  • 7月時点でのテレワーク実施企業は全体の34%
    ※ただし、東京商工会議所調査では、9~10月時点の調査で53.1%と報道されており、地域差があることが伺えます
  • うち、従業員1,000人以上の企業では74.7%、99名以下では17.6%
    ※この統計数値から、テレワーク導入率は企業規模により開きがあると言えます
  • 導入企業に今後の意向確認したところ、43.7%は同程度か規模を拡大しての継続を検討
  • テレワーク経験者の内87.2%が今後も継続を希望
    ※同様の統計は様々なところで取られており、そのほとんどが90%前後という高い数値になっています

■企業における、テレワークによる効果(実績)

  • 従業員の通勤負担の軽減・・・54.2%
  • 自然災害・感染症流行時における事業継続性の確保・・・52.5%
  • 家庭生活を両立させる従業員への対応・離職防止・・・31.3%

※その他、当初の目的以上に実際に生じた効果が大きいもの

  •  従業員の通勤負担の軽減
  • 人件費の削減
  •  紙や印刷コストの削減


このように、緊急避難的に始まったテレワークも、一つの働き方として定着すると共に、新たな効果を生んでいたことが統計から分かりました。

 

一方、課題も浮き彫りになりました。

  • できる業務が限られる・・・63.8%
  • 従業員同士の間でコミュニケーションがとりづらい・・・48.4%
  • その他
    ・ 紙書類・資料の電子化がされていない・・・38.5%
    ・ テレワークができない従業員との不公平感・・・38.1%
    ・労働時間の申告が適正か確認が困難・・・34.2%

特に、コミュニケーションについては深刻で、サイボウズ総研が行った「テレワークのコミュニケーション調査」によると、

  • 業務に関するもので1日当たり「30分未満(0分含む)」が6割、
    「業務にかかわらないもの」では「0分」が4割
  •  年代が下がるほどコミュニケーションのしづらさを挙げている
    (20代では61%、60代では51%)

と、非常に深刻な数値結果が出ています

セミナー中に行ったアンケート(テレワークにおける問題点)でも、コミュニケーション不足とチームワークの低下が上位に挙がっており、改めて、オンラインで関係構築することの難しさが感じられました。

企業にできることとは

このように、テレワーク導入により、企業にとって効果と言えるものもあれば、課題と言えるものもあります。
その状況をまずは受け止め、企業としてできることは、「会社としての取り組みを明確にする」ということだと言えます。

「コロナもテレワーク導入の風潮も、いつか収まるだろう」と言っている間に、テレワークは働き方として定着し始めました。

テレワークを導入することで効果を生んでいる企業がある中、テレワークを導入しないことで離職者が出ている企業もあります。

まずは、「できない理由」よりも「やるための策」に目を向け、導入している企業の実例を参考に実践してみませんか?

セミナーでは、大手各社が取り組むテレワークの取り組みを参考に挙げています。
(参考:厚生労働省 テレワーク総合ポータルサイト)

大手食品会社では、会社横断で「働き方改革事務所」を設置し、社内情報サイトで情報を発信したり、サテライトオフィスを拡充したりするなど、従業員の意識の醸成と実行のための場づくりに力を入れています。

また、大手保険会社でも、社内ニュースやイントラで情報発信すると共に、不安や疑問解消のためのセミナーを開くなど、従業員に寄り添った対策を打ち出しています。

その他、評価制度の変更や採用基準の変更などで、業績を上げたり、良い人材の確保に成功したりした企業もあります。

 

現場でできることがあるように、企業の取り組みとしてできることもたくさんあります。
「できない理由」よりも「やるための策」に目を向け、「会社の目標達成のために、何を行っていくべきか」を考える時に来ているのではないでしょうか。

 

現場でできることとは

企業としてできることについては、大掛かりな制度改革を伴う関係で二の足を踏まれる、という企業も多いと思います。

では、現場でできることについて目を向けてみましょう。

 

「仕事の進め方」「時間の有効活用」「従業員間のつながりの強化(コミュニケーション)」。
このあたりが課題であり、いずれも絡み合うように発生している問題のように見えます。

それを踏まえ、「つながり」について、セミナーでは重点的に話をしてきました。


●チームメンバ間

ここでは、関係づくりや横のつながり、連携のしやすさが求められると考えられます

関係づくりの対策として、最近よく耳にするのが、「雑談タイム」の導入です(こちらについては、過去のブログでも載せているものです)。

私自身、出社時には同じチーム内だけでなくあちこちの部門に声をかけて歩くタイプなので、雑談(あくまでも適度な)の必要性は感じています。

例えば、業務上で困ったとき、普段から声を掛け合っている人がいれば相談しやすいですし、雑談の中から講義で使うネタや、アイデアが見つかることもあります。

雑談タイムに関しては、複数の方からお聞きするところ、概ね15分程度で設定・実施されているようです。

その他、ランチタイムにはZoom等を繋ぎ、雑談したい人はブレークアウトセッションに参加する、などの取り組みもできます。

朝礼や夕礼を意識的にされている企業では、進行役の持ち回りや、ディスカッションテーマを決めて、話をするような試みもされているようです。

 

●上司・部下間

ここでは、関係づくりだけでなく、「育成」の観点からの試みも求められます。

テレワークになってから、これまで以上に細かく業務指示を行わないといけなくなった、という話を耳にしますが、それだけ、「気軽な質問・相談」がしにくくなったということではないでしょうか。

上司・先輩が何をしているか分からない中で質問や相談をするのは、なかなかハードルが高いものです。

と、いうことを考えて、最初からルールを決めて質問・相談の対応をしてしまおうという取り組みをされている管理職の方がいらっしゃいます。

グループチャットを活用したり、質問用の「グループ」を作り、そこに質問を投げかけ、気づいた方がアドバイスを入れたりする、など、チーム全体が助け合いながら進められているという試みもありました。

また、敢えて「本人に考えさせる業務指示」に切り替えて、一定の時間は自身で考えさせるようにしているという方もいらっしゃいました。

指示待ちではなく、自身で答えを探す姿勢を敢えて取らせることで、業務への取り組み姿勢が変わり、テレワークに必要な「自律・自立」を高めることにも役立っているそうです。

これなどは「テレワークだからこそできたこと」と言えるのではないでしょうか。

 

 

2020年は様々な意味での変革の年でした。

生活様式だけでなく、私達の意識変革も求められてきたのではないでしょうか。

セミナーを通じ、現場で働くみなさまが、模索しながらも成果に繋げていきたいという前向きな姿勢を持たれていることを感じることができました。

それは、私たち教育に携わるものにとっても同様で、「ご来社いただく研修と同等、それ以上の学習効果を生み出したい」という思いで取り組んでいます。

 

2021年はすぐそこまで来ています。

そして、2021年もテレワーク導入の流れは継続していくでしょう。

新たな年を実りあるものにするためにも、変わり続ける姿勢・気持ちを持ち続けながら、この変化の時代を乗り越えましょう!