2018年3月22日(木)にトレノケート新宿ラーニングセンターにて、「IoT・ロボティクス・コネクテッドカー機器開発の最新技術トレンド」 セミナーを開催しました。
IoT、セキュリティ、Linux、モデルベースなど機器開発で重要な最新の技術トレンドを、実際のビジネスの最前線で活躍されている経営者、技術部門のトップの方にご講演いただきました。
日本社会は、少子高齢化に伴い人口減少が進んでおり、この切り札として、IoT、自動化、ロボティクス、AIが注目を浴びています。
IoT普及に伴い、組み込み開発は、汎用OS、ネットワーク、通信、クラウド、サイバーセキュリティ、AIなど情報系システムから派生した技術やそれらと連携したものが主流となっていきます。
今後、組み込みエンジニアには、デバイスとクラウドとの一気通貫の技術や知見が求められます。実際、ビッグプレイヤーと呼ばれるGoogle社やMicrosoft社でさえもこのようなエンジニア、IoTアーキテクトが不足していると言われています。
組み込みエンジニアの方が、今後勉強しておいた方が良い項目は次のとおりです。
将来のキャリアには、デジタルトランスフォーメーションの意識を持つことも重要です。要素技術はもちろんのこと、ビジネスをデザインする力、プロジェクトをマネジメントする力、顧客視点(デザインシンキング)をもつことが必要となるでしょう。
組み込みの分野でもオープンソースソフトウェアの浸透が進んでいます。
AGL(Automotive Grade Linux)は、Linux Foundationのワーキンググループで、コネクテッドカーの共通基盤となるLinuxベースのソフトウェアスタックを開発するオープンソース共同開発プロジェクトです。宗像氏は、Linux Foundationのボードメンバーであり、AGL Advisoryボードメンバーでもあります。
AGLはまだ開発中ですが、非常に注目を浴びています。2018年のトヨタのカムリ(米国モデル)にもAGLの一部が採用されました。
AGLの適応分野は、IVI(in vehicle information)と呼ばれる分野で、例えばカーナビやエアコンのコントロールパネルや音楽などです。AGLは、機能安全やリアルタイム性は目指してはいません。AGLの目的は、車の中でインターネットを安全にストレスなく使えることです。また、ハードウェアに関係なく、できるだけリプレイスできるコンポーネントを目指しています。
AGLの運営は、これまでの垂直型ではなく、CODE FIRSTで共創を目指しています。
日本企業が中心になってコネクテッドカーの標準化に貢献することは、自動車業界だけでなく、他の業界にとっても非常に意義があると言えるでしょう。
自動車を取り巻く環境は、開発の効率化、低コスト化の要求があり、特に肥大化するソフトウェア開発への対応は必須です。自動車開発の半分はソフトウェア開発とまでも言われています。その課題の対応策の一つがMBD(モデルベース開発)です。
MBDを採用するメリットは、以下の通りです。
すべての開発フェーズでモデルを利用することができ、国内の各社自動車メーカも実際にMBDを採用しています。
また、新たな方法論として、MBSE(Model Based Systems Engineering)も注目されています。MBSEとは、INCOSE(The International Council on Systems Engineering)の定義では、システムの実現を成功させるためにできる複数の専門分野にまたがるアプローチおよび手段のことです。
MBSEは欧州でいち早く導入され、日本でも取り組みが始まっていますが、現状はハードルが高く、エンジニアも不足しています。
今後、MBDやMBSEを導入する場合、事業との整合性、他社との差別化、投資とリターンのバランスなど戦略的に検討する必要があります。
2025年には、270億個のデバイスがネットワークにつながるといわれています。
インターネットに接続されるデバイスは、たくさんの方法で攻撃を受けることを考慮しなければなりません。
組み込み機器はソフトウェアの更新や不正アクセスの発見が困難なため、高い信頼性が要求されます。多くの組み込み機器で使用されているC言語には脆弱性があります。脆弱性対策には、CWE、CERT Cコーディングルールが効果的です。IARシステムズ社の解析ツールの導入も有効です。
また、組込用プロセッサにも高いセキュリティ機能が追加されています。例えば、ARM TrustZoneは、Armv8-Mに新たに追加された、セキュリティ機能で、プロセッサにセキュアステートメントと非セキュアステートメントが導入されています。
今後は、組み込みエンジニアは、プロセッサのセキュリティ機能を十分に活用する設計力が必要となります。その際、IARシステムズ社の統合開発環境や解析ツールなどを利用することも有効です。
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