
フィードバックの思い出
私は、1990年にアメリカで「インストラクター・スキル」という研修を受講したことがきっかけとなり、現在のような"ヒューマンスキル"分野の研修を本格的に手がけるようになりました。
意外なフィードバックの思い出
これは、研修インストラクター向けに「教え方」「プレゼンテーション方法」「教材作り」などを5日間で教えるもので、私はそのクラスに唯一の日本人として参加しました。当然英語は下手で、講義についていくのもやっと。必死に辞書を引き、講義やディスカッションについていきました。最終日には、一人15分のプレゼンテーション演習があり、ビデオ撮影もありました。「OSのオペレーション」の講義をした私は、文法も完全に無視して、なんとかしゃべり終わったという状態だったのです。
研修の最後に、講師が「この5日間の参加について、ジュンコにフィードバックしよう」と声をかけました。何人かの手が挙がり、私に対するフィードバックが始まりました。
講義中も言葉を調べるのに必死でしたので、発言などほとんどしていませんでした。プレゼンテーションにおいては、英語はめちゃくちゃで、何を言っているのか、アメリカ人の受講者にはわからなかったと思います。なので、フィードバックでも「英語が下手だった」「言葉が通じないので、ディスカッションにも参加していなかった」など、否定的なコメントが多く寄せられるだろうと、身を硬くして構えていました。すると……。
アメリカ人のクラスメイトは、口々にこう言いました。
「ジュンコは、5日間ずーっと辞書を引いていた。」「ジュンコは、なんでもノートに書いていた。」「ジュンコのプレゼンでは、ホワイトボードに沢山書いてくれたので、理解しやすかった。」
5日間の緊張がさーっと解けた瞬間です。
人を伸ばすフィードバック
「ああー、フィードバックというのは、"ここが悪い"と指摘するだけではなく、"何をしていた"と感じるままを、それも、ポジティブに表現するものなんだ。」と目からウロコが落ちました。アメリカで苦労した甲斐があったと思い、こういう「気持ちがよくなる」研修を日本の企業人向けに開催したいと強く思いました。
この出張後、私は、いくつかのヒューマンスキル研修を開発し、開催し始めました。研修の基本精神として決めたのは、「決してネガティブなフィードバックをすまい。人は、認めてほしい生き物だし、認めることでその人が伸びるのだ。」ということです。
この時、受講したコースは、日本に持ち帰り、「トレイン・ザ・トレーナー~研修講師養成講座~」(コースコード:ON258、期間:4日間)として、今でも実施しています。その他にも「プレゼンテーション」「コミュニケーション」「リーダーシップ」「コーチング」など様々なヒューマンスキルの研修を開講しています。どの講師もすべてのコースにおいて、一貫して、「ポジティブなフィードバック」を心がけています。
人は、「その行為を認められ、褒められる」ことで成長する---。
トレノケートのヒューマンスキル研修の根底には、この精神があります。
ヒューマンスキル研修に参加することを躊躇している方、抵抗を感じる方、心配することなく、是非一度参加してみてください。
田中淳子の「人材育成」応援ラジオ
音声配信プラットフォームVoicyにて、「人材育成応援ラジオ」という番組を配信しています。
パーソナリティは人材教育シニアコンサルタントの田中淳子が務めます。人材育成に携わる方が「今日も楽しく仕事に取り組もう!」と思えるよう、人材育成にまつわるあれこれをお届けしています。
今回の記事でご紹介したエピソードについてもお話ししました。
下記にて公開しています。
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