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「ママ聞いて。ボク、一人で手を洗えたんだよ!」 ~最後まで話を聞く大切さ~

作成者: 田中淳子(たなかじゅんこ)|2022-05-25

研修2日目以降の朝は、「昨日、研修で学んだことをどこかで試してみましたか?」と質問することがあります。

たとえば、前日のテーマが「相手の話をさえぎらず、最後まで聞くことが大切」ということだった場合には、研修終了後、仕事やプライベートで誰かと会話した際「最後まできちんと聞く」ことが実践できたかどうか?を問いかけるのです。

「部下と話したけれど、聞いているうちにじれったくなり、途中で割り込んで自分の言いたいことを言ってしまった」と反省する方もいれば、「飲み会で聞き手に徹して、自分のことはしゃべらないようにした。すると、今まであまり言葉を交わしたことがない人とも、色々な話をすることができた」とうまく行った例を挙げてくださる方もいらっしゃいます。

「最後まできちんと話を聞く」を実践したエピソード

ある研修でも「昨日の研修が終わった後に、実践してみた方、どんな成果があったかを教えてください」とお願いしたところ、一人の女性がそっと手を挙げました。

「あのぉ~、仕事上の出来事ではなくて、2歳の息子のことなんですけど……。」とおっしゃって、次のような話をしてくださいました。
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研修初日が終了し、いつものように保育園に息子を迎えに行った。息子をベビーカーに乗せてできるだけ急いで帰宅したいのだが、いつも帰ろうとするとぐずり出し、てこずってしまう。

昨日も、息子はすぐにベビーカーに乗ろうとせず、「じゃぐち」と言った。

普段なら、「そんなのいいから、早く帰ろう」と手を引っ張るのだが、「最後まで話を聞く大切さ」を研修で習ったことを思い出した。「じゃぐちがどうしたの?」と聞くと、息子は私の手を引いて、水道のところまで連れて行った。2歳なのでうまく話せないながらも、どうやら、「ボクは、今日、一人で蛇口をひねって手を洗うことができたんだよ!」と自慢しているらしい。「そうだったの、よかったね」と言うと、息子はにっこり笑い、すたすたと自分からベビーカーに乗り込んだ。

いつも「積み木が」「先生が」などとなにやら言っていて、そうスムースには帰れないのだが、水道の蛇口を一緒に見にいったら、息子は満足したようだった。

これまでも「積み木」や「先生」について、私に伝えたいことが沢山あったのかもしれない。「いいから、早く帰ろう」と無理矢理ベビーカーに乗せようとしたため、抵抗していたのかもしれない。そんなことを反省した。


このようなお話でした。

「蛇口を見に行って多少時間がかかったと思いますが、普段と昨日蛇口を見にいってあげたときとでは、どちらが早く帰途につけましたか?」と尋ねると、彼女は、「蛇口を見にいったほうが普段よりもうんと早く帰れました。昨日は、まったくぐずらず、にこにこと自分からベビーカーに乗り込んでくれたんですから。」と言うのです。

交渉や説得で大切なこと

2歳の子供には、お母さんに何か伝えたいことがあった。それをお母さんが聞いて、「よかったね」と認めてくれた。それで満足が得られたので、自分から進んでベビーカーに乗った。ダダをこねることなく。


これは、2歳児とお母様の例ですが、これと同じようなことは、ビジネスの交渉の場面でもよく起こるのではないかと思います。

お客様は、どうしてもこだわっている点がある。その部分をエンジニアが真剣に聞いて受け止めてくれていない、と感じる。だから、不満が残る。聞いてくれない相手から何か説得材料を示されても、そう簡単には納得できない。そのまま、交渉はいつまでも平行線をたどってしまう―――。


交渉する時は、相手の言い分を聞くよりも、「こうしたい」「こうしよう」と自分の考えや自分の思いを前面に出してしまいがちです。でも、交渉相手の立場で考えると、「私の話も聞いて欲しい」「私が何に納得できないかを理解してほしい」と考えているのに、それに対しては、聞く耳を持ってくれないとなれば、素直に交渉のテーブルに着くのは難しくなります。

相手の言い分、相手の気持ち、相手の考え、相手の状況などをよく聞き、深く理解し、場合によってはしっかりと共感を示す。説得でも交渉でもまずはそこから始まります。

話を聞いてもらえた、共感してくれた、と思ってはじめて、人は「相手の言い分も聞こう」という気持ちになれるのです。   交渉や説得は、一方的に押し切るのではなく、相手とともにベストな解を見出そうとする協働のプロセスだと捉えるほうがよい結果を生み出します。

 

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