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「教える技術」で学習効果を高めるには

様々なお客様の人材育成を支援する立場で仕事をしていますが、人に何かを教えるという当たり前の行為の難しさを日々感じています。研修の場だけでなく、日々の業務の中でもうまく伝えられずもどかしい思いをすることがあります。

 

人に教えることの難しさ

自分が誰かに何かを教わった場面を思い出してみてください。とてもわかりやすい教え方で、理解が進んだ経験もあれば、余計わからなくなったという経験もあるはずです。わかりにくい教え方は、結果として時間も無駄になりますし、相手の理解が誤っていると、その後の仕事にも大きな影響を与えてしまいます。

それでは何故、わかりやすい教え方ができる人とできない人がいるのでしょうか。
これは、次の2つが大きく影響しています。

  • 学習効果の高い教え方を知っているかどうか
  • 教えることそのものに対して持っている意識の差

 

学習効果の高い教え方とは

ここで、私が新卒で入社した会社の新人研修での思い出をご紹介します。

入社後すぐに始まる2か月間の研修は、1クラス約30人、全体で8クラスほどありました。クラスには担当講師となる先輩社員が1名つき、マナーから業務スキルまで多岐に渡る内容を教えてくれます。私のイメージでは会社の研修内容はとても厳しく、鬼軍曹のような人がいるんだろうと勝手に想像して不安になっていました。
しかし、研修初日、私のクラス担当である先輩社員は教室に入ると、とても嬉しそうな表情で入社のお祝いと私たちに対する期待の言葉を述べてくれました。不安や緊張があっという間に解けていきました。
その後の研修期間中も常に新人の目線で接し、丁寧にわかり易く教えてくれました。おかげで私も含めてクラスの受講者全員が研修に集中し、真面目に、楽しみながら様々な知識やスキルを身に付けることができたのです。
もう20年以上年前になりますが、クラスの誰もがあの先輩のような社会人になりたいなという尊敬や羨望の眼差しで見ていたのを覚えています。

 

人材育成や教育に関わるようになってから、この先輩の教え方が上手だった理由に気付きました。ほんの一部ですが以下のような例があります。

  •  一方的に進めるのではなく新人のレベルに合わせて理解を確認しながら伝える
  • 興味を持てるように実際の体験談をもとに、具体例やたとえ話などを多く盛り込む
  • 何故、そうする必要があるのかの理由や、しないとどうなるかを伝え、考えさせる
  • 学ぶべきスキルや知識に最もマッチした演習や実習を盛り込む
     

「対等に接する」ことが重要

そして最も大きかったのが、当時新人であった私達に対して、学生や年下扱いするのではなく、同じ社会人・同じ会社の一員だということを常に意識し、大人として対等に接してくれたことでした。もちろん新人ゆえの言動で叱られたこともありますが、それもすぐに指摘された点を改善できる、かつ納得感のある言い方でした。

人に何かを教えるのはとても難しいことです。しかし、より効果の高い学習を行うための基本となる技術はあります。単に「知っているから」「その分野の専門だから」「説明できればよいから」ではなく、貴重な時間を割いて行うものだからこそ、しっかりと大人に対する教育の考え方やスキルを身につけておきたいものです。

毎年、春は多くの企業の新人研修に関わっています。その中で、学習目標をきちんと達成し、必要なスキル・知識を身につけていただくことはもちろんですが、当時のクラス担当だった先輩のようになれているのかな、ということを今でも思い出すようにしています。
 

 

関連コースのご案内

 トレイン・ザ・トレーナー(ON258) では、成人に対する学習の考え方に基づき、「教える技術」を強化し、質の高い研修を提供するための知識とテクニックを学び、研修の現場でそれらを実施・応用できるようになることを目指します。