― トレノケートが支援するセキュリティ人材育成 ―
※本記事の内容は、2025年(令和7年)6月時点で公表されている情報に基づいています。今後、法改正や制度の見直し、社会情勢の変化などにより、記載内容が最新の状況と異なる可能性があります。ご覧いただく際は、最新の公式情報もあわせてご確認ください。
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2025年(令和7年)5月16日に国会で成立した「サイバー対処能力強化法(強化法)」および「サイバー対処能力強化法整備法(整備法)」は、日本のサイバーセキュリティ対策における大きな転換点となる法制度です。
出典: 内閣官房「サイバー安全保障に関する取組(能動的サイバー防御の実現に向けた検討など)」https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/cyber_anzen_hosyo_torikumi/index.html
この法制度の核心となる「能動的サイバー防御」とは、サイバー攻撃に対して「やられてから対応する」従来の受動的な防御から脱却し、政府が主体となって通信情報の分析や、将来的には攻撃元への無害化措置を行うことを可能にする能動的なアプローチです。
これは新しい技術の導入というよりも、法制度と体制を整備することで、国全体でサイバー攻撃に先回りして対応しようという考え方の転換を意味します。
具体的には、適切な手続きを経て、警察と自衛隊が攻撃に使われているサーバーやボットネット(乗っ取られた機器のネットワーク)に対して無害化措置を行うことが想定されています。一般的な攻撃は警察が対処し、国家など高度に組織的な背景があると判断した場合には自衛隊や防衛省が対処する役割分担となっています。
重要なのは、通信事業者と基幹インフラ事業者(電気、ガス、水道、鉄道、空港、港湾、電気通信、放送、金融、クレジットカード事業など15分野の計249事業者)、政府機関の間で情報を共有・分析する仕組みが法的に整備される点です。これにより、政府が早期に異常を発見し、民間企業と連携して対策を講じるサイクルが構築されます。
近年、電力、交通、通信などの重要なインフラ事業者に対するサイバー攻撃が深刻化しています。内閣官房の資料によると、重要インフラの機能を止めたり破壊したりすることを目的とした攻撃は、「国家を背景とした形でも日常的に行われており、安全保障上の大きな懸念」となっています。
出典: 内閣官房「サイバー安全保障に関する取組(能動的サイバー防御の実現に向けた検討など)」https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/cyber_anzen_hosyo_torikumi/index.html
実際に起きている被害の例を見ると、その深刻さが浮き彫りになります:
対象分野 | 攻撃手法・被害内容 |
---|---|
航空会社 | ネットワーク機器がDDoS攻撃(大量のアクセスによる妨害攻撃)を受け、フライトの運航に大きな支障が発生し、航空券販売システムも一時停止 |
通信事業者 | メールサービスへの不正アクセスにより、数百万件規模の情報が漏れる可能性が判明し、社会的な混乱を招いた |
金融機関 | DDoS攻撃により大手銀行のインターネットバンキングシステムが相次いで機能停止し、顧客の取引や決済サービスに大きな混乱が発生 |
ECサイト | ペイメントアプリケーション改ざん(Webスキミング)による大規模なクレジットカード情報漏えいが相次いで発生。攻撃者に気づかれずに長期間情報が窃取される事態が続いた |
その他のインフラ分野 | その他のインフラ分野でも、サイバー攻撃による被害が続いており、対策が急務となっている |
これらの攻撃に共通する重要な課題は、「攻撃されてから対応していては遅い」という現実です。従来の「各組織が自分で守る」というアプローチでは限界があることが明確になっています。「能動的サイバー防御」は、こうした危険を事前に察知し、被害が出る前に対処する仕組みの構築を目指しています。
今回の法整備は、2022年(令和4年)12月に決定された「国家安全保障戦略」に基づく体系的な取り組みです。この戦略では、日本のサイバー安全保障対応能力を欧米主要国と同等以上に引き上げることが明確な目標として設定され、能動的サイバー防御の導入に向けて以下の3つの重要な措置の実現に向けた検討が開始されました。
これらの取組を実現・促進するために、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を発展的に改組し、「国家サイバー統括室」として2025年7月1日に新たに発足させることが決定されました。あわせて、事務次官級の「内閣サイバー官」ポストが新設されます。この「国家サイバー統括室」は、サイバー安全保障分野の政策を一元的に総合調整する司令塔となることが期待されています。
出典:
内閣官房「国家安全保障戦略」(2022年(令和4年)12月16日閣議決定) https://www.cas.go.jp/jp/siryou/221216anzenhoshou.html
国家サイバー統括室
https://www.nisc.go.jp/
国際的な観点から見ると、アメリカやイギリスでは、政府がインフラ事業者に対して法的に情報の提出を求めたり、特定のサーバーに対して対策を実施したりする制度が既に確立されています。日本でも、同様の制度の整備が本格化し、国際的なセキュリティ基準への対応が実現することになります。
「法律ができたから安心」ということでは決してありません。法制度は基本的な「枠組み」を提供するものであり、実際にその実効性を支えるのは、政府や警察、自衛隊といった公的機関に加え、基幹インフラ事業者や、それらと取引のある民間企業など、各組織の「現場」における取り組みです。
今後、民間企業に求められると考えられる主な対応は以下の通りです:
今後の制度や政策の展開によっては、一部の企業だけでなく、より幅広い民間企業にも影響が及ぶ可能性があります。特に昨今のサプライチェーンリスクの高まりを受けて、基幹インフラ事業者や電子計算機器等の供給者と取引関係にある企業にも影響が波及する可能性があります。直接的な法的義務がない企業であっても、取引先からセキュリティ対応レベルの向上を求められるケースが増えていくことが予想されます。
能動的サイバー防御の法制度が整備されつつある現在、基幹インフラ事業者はもちろん、その関連企業も含めて「実際に対応できる人材」と「適切な体制」を今のうちから準備しておくことが重要です。早めの準備により、将来的な要求にも余裕を持って対応できるようになります。
関連法令の詳細情報:
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推奨コース:
【9】資格対応コース(CEH、CISSP、CompTIA、登録セキスペなど)推奨コース:
【11】役割・担当業務別コース一覧
【その他】技術カテゴリ別コース一覧(ネットワーク、クラウド、IoT/OTなど)
https://www.trainocate.co.jp/reference/security/course.html#SEC02
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