「IT技術者は常に冷静で、淡々と業務を進める。」
「業務に関する情報以外のコミュニケーションはあまり求めていない。」
そんなイメージはありませんか?
私がシステムインテグレータで勤務していた時のエピソードをもとに、技術者とのコミュニケーションで心がけたいポイントをお伝えします。
「ITシステムにはトラブルがつきものだからなあ」
新卒でシステムインテグレータに入社して1年が経った頃、担当していたITシステムでトラブルが頻発し、対応に追われる日々が続いていた時に先輩から言われた言葉です。
「トラブルがつきものだからなぁ」とは、それからもITシステムの現場ではよく耳にしましたし、私自身も誰かへの慰めの言葉としてよく使っていました。
しかし、ある時ふと疑問に思ったのです。
「この言葉は慰めになっていないんじゃないか。こう言われて、本当に気持ちが和らぐのだろうか。」
続けて、こう思いました。
「慰めの言葉よりも、状況や悩みを聴いてほしい。話を聴いてもらったほうが、よほど気持ちが和らぐのに。」
若手時代の別の話です。
担当していたITシステムの運用作業でミスがあり、一時的にシステムが利用できなくなるトラブルが発生しました。お詫びの訪問を前に上司にトラブルの経緯を伝えたところ、上司は矢継ぎ早にこう投げかけました。
「なぜ、そんなミスをしたんだ。」
「どうして、そんなことも防げなかったんだ。」
至極まっとうな質問ではあるものの、強い口調で責められ、頭の中に浮かんできたのは、
「ミスしたくてミスしたわけでもないのに。」
という言葉でした。
トラブルを意図的に起こす人はいませんし、誰かひとりが原因となってトラブルが起こることは少ないものです。誰かの行動が引き金になった場合でも、仕組みや方法に問題があることも稀ではありません。それにもかかわらず、ただ一方的に責められたとしたら、気持ちのやり場がなくなってしまいます。
人には承認欲求があります。自分がやっていること、もっと言うと自分の存在自体を誰かに認めてもらいたいという気持ちを持っています。トラブルが起こった時であっても、日々の運用作業に対して、「いつも頑張っているよね」と上司やまわりの同僚が気にかけて労いの言葉をかけてくれると、「その後の対応を頑張ろう」と思えるものです。
また、「どういうことが起こったのか聴かせてくれる?」と状況や悩みも聴いてもらえたら、落ち着きを取り戻すこともでき、「これから気をつけよう」、「もう少し頑張ってみよう」と前向きな気持ちになることができます。
IT技術者というとクールに黙々と業務を進めるイメージがあるかもしれませんが、IT技術者も人ですから、人の気持ちに配慮した対応が重要です。特にコミュニケーションの仕方を工夫することはリーダーシップの大きな要素で、リーダーはメンバの気持ちやモチベーションに配慮してコミュニケーションをとることが大事です。
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