DX(デジタルトランスフォーメーション)は業界問わず多くの企業が力を入れているトピックです。
実際に従業員に学び直しとしてDXの資格取得やセミナー参加を促す企業も見られることから、「自社でもできることから少しずつ取り組みたい」と考える方もいるでしょう。その場合におすすめの選択肢が、資格取得やDX関連研修の受講です。その中でも「まずはDXやITに関する従業員の知識を深めたい」というステップでおすすめの方法の1つがDX検定の受験です。
本記事では企業のDX推進において、従業員ITリテラシー向上に効果的なDX検定の概要や合格までの流れを解説します。
※今回ご紹介するDX検定の情報は2023年11月時点のものです。受検時はDX検定の公式情報を確認してください。
DXはデジタルトランスフォーメーションの略称です。
企業がビッグデータやICTなどのデータ・デジタル技術を活用し、既存の製品やサービス、ビジネスモデルや組織、各種業務プロセスや企業文化・風土などを革新することで、競争上の優位性を確立する取り組みを指しています。ここからはまずDX周辺用語への知識を深めましょう。
■あわせて知りたい1:デジタイゼーション
DXとあわせてよく聞かれるデジタイゼーションは業務のデジタル化を指します。具体的な取り組みとしてはペーパーレスが挙げられます。たとえば、これまで契約書を紙ベースで扱っていた場合、タブレットやパソコンを使い電子契約書化することです。また、会議を会議室で実施するのでなく、オンラインでWEB会議システムを活用して行うこともデジタイゼーションの一種です。
デジタル技術を活用することで、これまでのビジネスプロセスをデジタル化することをデジタイゼーションと言います。
■あわせて知りたい2:デジタライゼーション
デジタイゼーションと混同されがちな用語としてデジタライゼーションがあります。デジタライゼーションでは、デジタル技術を活用することで業務のデジタル化はもちろん、企業そのものに変革をもたらす範囲にまで及びます。たとえば、これまでクリーニング店舗でのみクリーニングサービスを扱っていたものをオンラインでのサービス導入に踏み出し、公式サイトで情報登録や支払い、クリーニングのプランを選択できるようにし、顧客は対象の衣類を発送するだけで店舗に行かずともクリーニングが可能になるという変化もデジタライゼーションです。業務フローをデジタル化するだけでなく、提供するサービスの形態までをも変化させることがデジタライゼーションです。
このようにDXの推進にはまず自社のデジタル化が求められますが、そこには従業員のITリテラシー向上が必要です。ITへの知見を深めることで、具体的なデジタルツールの導入が進められます。
今回はDX推進に必要な知識をつけるさまざまな検定や資格の中でも、学習範囲やeラーニングの準備があり取り組みやすい「DX検定」を紹介します。
DX検定は「DX検定™(日本イノベーション融合学会*ITBT(R)検定)」が正式名称です。IT先端技術トレンドとビジネストレンドの知識をはかることを目的とした検定で、今後の社会発展やビジネスシーンで必要になる知識を身につけ、かつ証明が可能です。2018年7月に検定が始まって以来、多くの企業が自社の人材育成に活用しており、今後も需要が見込まれる検定です。
DX検定は受験条件が定められておらず、誰もが受験可能です。
試験は60分で120問の回答を行い、多肢選択式です。
なお、受験方法はWEB受験のため、自宅や会社のPCまたはタブレットから回答可能です。
DX検定は単に合格の可否を問うのではなく、3つのレベルにわけて能力を認定され、各レベルの該当者に認定委員会承認の「スコア認定証」が発行されます。なお、具体的には以下のレベルにおいて認定証が発行されます。
*スコア800以上:DXプロフェッショナル
*スコア700以上:DXエキスパート レベル
*スコア600以上:DXスタンダード レベル
なお、このレベル認定は2年間有効です。さらに、レベルごとに協会オリジナルの「オープンバッジ」が進呈されるため、従業員が名刺やプロフィールに証明として掲載し、ビジネスチャンスや信頼獲得に繋げられます。
試験の範囲は協会が発表するシラバスからの出題であることから、協会の各種資料をよく確認して試験に臨みましょう。
ここからはDX検定の受験を検討する場合、知っておきたい学習方法を紹介します。試験は個人・企業規模いずれでも受験可能です。
まずは出題範囲が記載されている協会のシラバスを確認します。シラバスには出題され、かつDX推進に欠かせない用語が掲載されています。読み進めていくと知っている用語と知らない用語がでてきますが、知らない用語は自分で調べ、ノートにまとめたりエクセルで一覧を作ったりして覚えていきましょう。なお、用語の意味だけを調べるのでなく、どのようなシーンで使われる用語かなど、 利用例もあわせて調べます。
用語を覚える際は、意味を自分の中で理解し、かつ他の人に説明できる状態にしておきましょう。
シラバスで用語への理解を深めると同時に検定準拠のeラーニング「DX Study™」での学習もおすすめです。「DX Study™」では、IT技術のトレンド編とビジネストレンド編の両分野の学習をドリル型で行います。シラバスに掲載される用語を調べ、知識の定着に活用する使い方が適しています。
学習はeラーニングの他、推薦書籍を使った方法もおすすめです。DX検定を主催する一般社団法人日本イノベーション融合学会ではレベルに合わせた推薦書籍を10冊紹介しています。これからDXを学ぶ初心者向けに4冊、さらに知識を深めたい方向けに6冊あります。個人でコツコツ進める場合は、書籍を通勤時間や休憩時間に読み込んで行く方法も選択肢の一つです。なお、全10冊の一覧は下記のとおりです。
【初心者向け書籍】
【中・上級者向け書籍】
eラーニングや書籍で用語への理解を深めたら、過去問に取り組みましょう。サンプル問題の数は決して多くはありませんが、一度目を通しておくと出題される文章の形を把握できます。
ここからはDX検定を受けるメリットを個人と企業単位それぞれで解説します。最初にDX検定受験が従業員各自にもたらすメリットを紹介します。
DX検定ではビジネスシーンにおけるデジタル技術や用語への理解を深められることから、個人のITリテラシー向上に繋がります。デジタル技術の活用は広範囲にわたり、普段スマートフォンやパソコンを使っていても「この機能はどのように使うのだろうか」「この用語は何を指しているのか」と疑問を持つシーンがあります。その際に知識を深めておくとデジタルサービスを有効活用できたり、誤った情報に惑わされたりすることが減るでしょう。
デジタル社会において自分の身を守り、有利に情報活用するためにDX検定を通じて知識獲得がおすすめです。
個人でDX検定を受験し一定のレベル認定を獲得すると、現在所属する企業で業務範囲を広げられたり、転職時にDX人材としての採用を目指せたり等、DX人材としてのキャリアが開ける可能性があります。業界や企業の規模によってはデジタル人材やDX人材が不足していることから、重宝される可能性もあります。
ここからは企業規模でDX検定がもたらすメリットを紹介します。
企業全体、もしくは該当部署内でDX検定を受験し、知識を獲得すると企業レベルでのITリテラシー向上に繋がります。その結果、これまで導入したものの活用が進んでいなかったデジタルツールを有効活用できたり、新たなビジネス展開のきっかけを得られたりする可能性もあるでしょう。
DX検定は個人で受けるとモチベーションを維持しにくかったり費用を負担するのが困難だったりと課題があります。しかし、企業が主体となり費用を負担し、学習スケジュールを組むことで敷居が下がり、取り組みやすくなったり、従業員同士で切磋琢磨して合格を目指したりといった動きが見られる可能性があります。
DX検定で得た知識は普段の業務に活かせるため、企業のDX推進に寄与します。そのため、これまでの業務プロセスの改善(デジタイゼーション)から始まり、最終的に新たなビジネスモデルの創出まで発展する可能性があります。
ただし、DX検定だけでは継続的な知識の獲得や実践が難しいため、検定受験後は外部のDX人材育成研修を受けたり、セミナーやシンポジウムに参加して学ぶ機会を設けたりと、学びを深め、かつ情報を更新できる機会を検討・用意することがおすすめです。
DX検定は既存社員のITリテラシー向上だけでなく、これから入社する新入社員研修のカリキュラムとしても効果的です。入社してから一年間で受験を視野に入れた研修カリキュラムを組むと無理なく取り入れられます。また、新入社員研修時に外部の研修を活用し、新入社員研修用のパッケージとは別にDX人材育成のものを併用する方法もあります。
自社で育成が難しい場合、外部の人材育成会社を活用する方法もおすすめです。
ここからは企業規模でDX検定を受験したいと考えた時に知っておきたい注意点を紹介します。学習や受験は「なんとなく」では取り組みにくいため動機づけがおすすめです。
従業員は普段の業務で手一杯である可能性もあるため「なぜやるのか」「受験したらどうなるのか」が見える説明でなければ積極的に取り組んでもらえなかったり、反対されたりする可能性もあるでしょう。企業でDX検定の受験を行う場合、該当する従業員に対して「なぜこの検定を受験するか」を明確に伝えることが重要です。
例えば、「これからデジタルツールを導入して皆さんの業務効率化を図りたいのですが、使いこなすためには知識が求められるため会社(部署)全体でDX検定を受験します。」「今後企業としてデジタル技術を用いて新たな販路を切り開くため」など、納得感につながる意図を伝えることをおすすめします。
受験が決まったら、従業員に対して必要な情報を提供します。この際に「eラーニングに登録しておいたから自分で好きなタイミングで進めてください」と任せきりになると、従業員の学習が進まなくなり頓挫する可能性があります。
受験日や試験要項、学習教材を準備したら具体的な学習スケジュールを明示したり、従業員に都度進捗を確認したりしながら進めます。業務量が多く学習時間がとれない従業員に対しては部署全体で業務量を率する働きかけも大切です。
DX検定の合格者や高いレベル(DXプロフェッショナル)の保有者にはインセンティブを設けるなどの取り組みも、受験のモチベーションアップに繋がる可能性があります。
DX検定は従業員のITリテラシー向上や企業のDX推進のきっかけに適しています。そのため、企業主体で受験を促したり、合格後にメリットがある仕組みづくりを行ったりすると士気が高い状態で従業員の合格が目指せます。もちろん受験料や学習教材の購入で費用がかかり、踏み出しにくい場合もあります。しかし、先行投資として取り組むことで、数年後の企業成長に繋がる可能性もあります。
DX人材の育成はDX検定の受験以外には、外部の研修ソリューションを活用する方法もおすすめです。トレノケートではDX人材の育成研修が充実しているため、これからDX推進を目指す企業におすすめです。自社のデジタル人材やDX人材育成にお悩みの場合はぜひ一度ご相談ください。