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社会人基礎力とは?人生100年時代の最新版と実務で活かすポイントを解説

作成者: 長山 晴美 (ながやま はるみ)|2025-03-19

目次[非表示]

  1. 社会人基礎力とは?
    1. 3つの能力とそれぞれの能力要素
  2. 「人生100年時代」に対応して再定義された社会人基礎力
  3. 再定義の背景は、現役時代の長期化によるキャリアの変化
  4. 社会人基礎力の活用場面の例
    1. チームでの共同作業
    2. 自己管理
    3. フィードバックの受け入れ
  5. 現場で活かすには、言葉のズレをなくすことも重要
  6. 認識を合わせるためには、同じイメージを持つことが有効

社会人基礎力とは?

社会人基礎力とは、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」のことです。2006年に経済産業省が提唱し、3つの能力と12の能力要素から成り立っています。

 

3つの能力とそれぞれの能力要素

  1. 前に踏み出す力(アクション)
    • 主体性
    • 働きかけ力
    • 実行力
  2. 考え抜く力(シンキング)
    • 課題発見力
    • 計画力
    • 創造力
  3. チームで働く力(チームワーク)
    • 発信力
    • 傾聴力
    • 柔軟性
    • 状況把握能力
    • 規律性
    • ストレスコントロール力

 

これらの能力は、2006年に最初に定義されましたが、2018年には「人生100年時代」の要素が加わり、再定義されました。

 

「人生100年時代」に対応して再定義された社会人基礎力

「人生100年時代の社会人基礎力」は、

これまで以上に長くなる個人の企業・組織・社会との関わりの中で、ライフステージの各段階で活躍し続けるために求められる力
参考:「人生100年時代の社会人基礎力」と「リカレント教育」について (経済産業省)

 

と定義されています。

再定義された社会人基礎力は、もともと含まれていた3つの能力と12の能力要素には変わりありませんが、自らキャリアを切り開くために必要な3つの視点が追加されました。

  1. どう活躍するか(目的):自己実現や社会貢献など
  2. 何を学ぶか(学び):社会人基礎力のほか、ITや業務など専門スキル
  3. どのように学ぶか(統合):体験や経験も含め、多様な学びの手段

 

ライフステージや環境が変化していっても能力を発揮していくため、上記の視点で自分の現状を認識したうえで振り返る「リフレクション」をしていくことが重要となります。

 

再定義の背景は、現役時代の長期化によるキャリアの変化

そもそも「人生100年時代」とは、現代では平均寿命や健康寿命が延び、100歳まで生きるのが当たり前になっていることを示します。2016年に発売された『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』で提唱された概念となります。
実際に、日本人の平均寿命は年々延びており、厚生労働省の発表では男性が81.09歳、女性が87.14歳 (※)となっています。過去5年でも1歳近く延びており、若い世代の平均寿命はさらに延びる可能性もあります。

令和5年簡易生命表の概況 (厚生労働省)

健康寿命が延びたことで、元気に活動できる期間も長くなり、結果、定年退職の年齢が変わるなどの変化が起きています。そうなると、働き方やキャリアに対する考え方も変える必要があります。そこで、社会人基礎力についても、こうした変化に対応できるように再定義がなされました。

 

 

社会人基礎力の活用場面の例

社会人基礎力は、ある意味あらゆる場面で必要となるリテラシー的な位置づけですが、特に新入社員や若手社員の方であれば、例えば、次のようなケースで活用できます。

チームでの共同作業

多くの業務で、複数の人とコミュニケーションを取りながら協力していき、チーム全体で目標を達成していくことが求められます。発信力や傾聴力、柔軟性のほか、主体性や課題発見力なども重要です。

 

自己管理

特に新入社員は、企業での業務そのものが初めてです。業務や環境になるべく早く慣れることができるよう、自己管理が求められます。規律性やストレスコントロール力、柔軟性などが重要です。

 

フィードバックの受け入れ

自分を成長させるために、上司や先輩からのフィードバックを適確に受け入れ、行動を改善していくことが求められます。傾聴力や柔軟性、実行力などが重要です。

このほかにも、課題発見力や創造力があれば業務での問題に気付き解決に導くことができますし、計画力や実行力があればプロジェクトに参加した際に活躍が期待できます。

 

 

現場で活かすには、言葉のズレをなくすことも重要

トレノケートでは新入社員研修も提供していますが、その中で自分が「主体性」について発揮できたかの振り返りを行った際、2人の新入社員の方が次のように答えました。


Aさん 「自分は、リーダーを決めてくださいと言われたときに自分から手を挙げたので、主体性に関しては出来たと思います」

Bさん 「自分からリーダーをやります、と言いましたが、主体性を発揮したところまではいっていない気がします」

 

2人とも自らリーダーに立候補したにもかかわらず、このように認識に違いが出ていました。これは、「主体性」という言葉の理解にズレがあるからです。
社会人基礎力における主体性の定義は、「物事を進んで取り組む力のために指示を待つのではなく、自らやるべきことを見つけて積極的に取り組むこと」です。ここで重要なのは「自らやるべきことを見つけて」という点が含まれていることで、ただ積極的にやっただけでは、「主体性がある」とは言えません。

ほかにも、計画性の定義は「課題の解決に向け、プロセスを明らかにし、準備する力」です。つまり、課題の解決に向けて複数のプロセスを明確にして、その中で最善のものが何かを検討して、それに向けた準備をする、ということです。やるべきことが決まっていてその段取りをするだけでは「計画力」としては足りず、やるべきことが何かの定義のところから行う必要があるのです。

 

意外と、もともとイメージしていたよりも難易度が高いと感じませんか?新人社員以外の年代でもここまでの計画力を持つというのは、なかなか大変なことです。

このように、同じ言葉でも複数の人がいれば、その人の数だけ理解が異なる可能性があります。言葉の理解がお互い異なることに気付かずにいると、議論が錯綜することになります。 

 

認識を合わせるためには、同じイメージを持つことが有効

では、どのように社会人基礎力に対する認識を合わせていけばよいのでしょうか?
これは、定義自体を知ることはもちろんですが、定義について、どんなイメージを持っているか、具体的にどういうことを指すか、などをお互いに確認しながら地道に認識合わせをしていくことになります。


とはいえ、普段の業務ではなかなかそこまで出来ない、とお悩みを多く寄せられたため、全員が同じイメージを持てるようにするために、ストーリー形式で社会人基礎力を解説したeラーニングを開発しました。


実際の業務に即した具体的なシーンで、社会人基礎力の能力を発揮した場合、発揮できなかった場合にそれぞれどんな状態になるかを、OK例、NG例両方を紹介することで、腹落ちしやすいようにデザインしています。
また、付属の「ふりかえりシート」で、自信での内省や、今後伸ばすべき「能力要素」とその行動の設定が可能となっている、自学自習を促すこともできるコンテンツです。


ストーリーで学ぶ人生100年時代の社会人基礎力
~ふりかえりシートで自己学習支援~ (新入社員向け)


OK例、NG例は12の能力要素すべてに対応していますので、合計24個のストーリーが収録されています。
また、3つの能力のうち、1つの能力が足りなかった場合のストーリーも収録しているので、人生100年時代になぜ社会人基礎力が必要になるのかが理解できる設計になっています。

新入社員だけでなく、OJTトレーナーとの共通言語化にもおすすめです。