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生成AI 国内動向まとめ(2024年4月)

この記事では、過去1年を目安に20244月までの国内での生成AIに関する動向を中心にまとめています。

生成AIに関して、日本国内ではどのような動きがあったのか、国・企業・ビジネスパーソンとそれぞれのレベルでの動きについてトピックをまとめています。生成AIに関する取り組みを行う上での参考にしていただけるとうれしく思います。

日本における生成AI市場

2023年1221日に一般社団法人電子情報技術産業協会が発表した「生成 AI 市場の世界需要額見通し」によると、日本においては年平均で47.2%増の成長率で、2030年には、17,774億という市場規模に達するとのことでした。

ちなみに生成 AI 市場の世界需要額は年平均 53.3%で成長し、2030 年には 2,110 億ドルに達し、2023 年の約 20 倍となる見込みとのことです。特に利用が進む分野としては、金融と製造の2つが挙げられています。

 

<参考・引用>

第370回NRIメディアフォーラム:野村総合研究所

JEITA、生成AI市場の世界需要額見通しを発表:一般社団法人電子情報技術産業協会



AIの雇用代替率、日本はアジアTOP

2024年48日に発表された、東南アジア諸国連合と日中韓(ASEANプラス3)による域内経済の調査監視組織「AMRO」が、ASEANプラス3と香港を対象に試算した結果によると、日本はAIで自動化される可能性の高い雇用の比率が14.4%とアジアの中では突出していました。

日本では事務的な仕事の占める割が他の国に比べて高いというのが理由とのことです。

<参考・引用>

AIで雇用代替、日本が突出 アジアの14カ国・地域で:47NEWS(よんななニュース)

 

政府による積極投資

今後ますます需要が拡大していくことが見込まれる生成AIに対して、日本では国の支援が積極的に行われています。生成AIそのものの開発だけでなく、これに関わる半導体開発について、大きな投資を行うというニュースがありました。

半導体開発へ5,900億円の追加支援

Rapidus株式会社(ラピダス)は、日本の半導体メーカーです。2022年8月に、日本の主要企業8社の支援を受けて設立されました。このラピダスに対して、2024年4月2日に最大5900億円を追加支援するという政府の発表がありました。国による支援は、すでに予定しているものも含めて、総額で9,000億円余りとなります。

世界における半導体開発において、生成AIに欠かせないGPU(Graphics Processing Unit:GPUとは、画面表示や画像処理に特化した演算装置)の世界シェアNo.1といわれるNVIDIA(エヌビディア)が独走状態となっています。

今後、日本の半導体開発がどのように変わっていくか注目です。

 

<参考・引用>

経産省がラピダスに5900億円追加支援、チップレットなど後工程に535億円:日経クロステック

経産省 ラピダス新工場に最大5900億円支援へ 総額9000億円余に:NHK

生成AIの3市場を徹底解説、GPUシェアはNVIDIA一強、OpenAIやサービス市場は?:ビジネス+IT

 

生成AI開発へ84億円の支援

生成AIに関しては、海外に大きく遅れている日本政府として、国内の生成AIの開発能力を強化するために積極的に投資をすることとなりました。予算の総額は84億円です。公募により、企業や研究機関など7つが選ばれました。

  1. ABEJA
  2. Preferred Elements
  3. ストックマーク
  4. Sakana AI
  5. Turing
  6. 情報・システム研究機構
  7. 東京大学

プロジェクト名は「GENIAC(ジーニアック)」で、Generative AI Accelerator Challengeの略です。最新鋭のGPUAI向け半導体)を搭載したGoogleのスーパーコンピューターを無料で利用でき、およそ6か月間で社会実装に向けた“国産・生成AI”の開発を目指す取り組みです。

 

<参考・引用>

【独自】“国産・生成AI”開発 政府が7者採択 Googleが支援(テレ東BIZ):Yahoo!ニュース

【独自】国内7者を採択 “ 国産の生成AI ” 政府が支援へ:テレ東BIZ(テレビ東京ビジネスオンデマンド)

 

生成AIの利用におけるガイドライン

政府の積極的な投資が進むことと歩調を合わせるかのように、国や地方自治体での生成AIのガイドラインに関する取り組みも進んでいます。

 

経済産業省

2024年1月、AI を活用する事業者(政府・自治体等の公的機関を含む)が安全安心な AI の活用のための望ましい行動につながる指針(Guiding Principles)を確認できるものとして、「AI事業者ガイドライン検討会」にて「AI事業者ガイドライン案」をとりまとめました。
このガイドラインは、5部構成となっており、”第1部 AIとは“では、用語の定義を中心に記載され、”第2部 AI により目指すべき社会と各主体が取り組む事項では、AI の活用により目指すべき社会、それを実現するための「基本理念」(why)や原則と各主体に共通する指針(what)などが記載されています。そして、第35部では、下記のとおり役割ごとのガイドラインが定義されています。

・第3部 AI 開発者に関する事項
・第4部 AI 提供者に関する事項
・第5部 AI 利用者に関する事項

 

文部科学省

2023年7月に、初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドラインを整備しました。
⼦供がAIの回答を鵜呑みにするのではないか等、懸念も指摘されおり、児童⽣徒や教師に対して、⼀定の考え⽅を国として示した内容になっています。

これと合わせて、公立中学校・高等学校等を対象として「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」に示されたパイロット的な取組を進める生成AIパイロット校を公募するという、ことも行っており、ガイドラインの整備だけでなく、現場での活用における取り組みも進めています。

 

東京都

2024年4月に東京都デジタルサービス局は、文章生成AI利活用ガイドライン Version 2.0をリリースしました。
このガイドラインは、東京都で初めてとなる文章生成AIの利活用ガイドラインです。
文章生成AIは、業務のあり方を大きく変える可能性がある一方で、リスクも指摘されていることもあり、正しく理解し正しく利用することを促進するために定められました。


<参考・引用>

AI事業者ガイドライン案:経済産業省

生成AIの利用について:文部科学省

文章生成AI利活用に関するガイドライン:東京都デジタルサービス局

 

企業における生成AI事例

生成AIの活用方法というと、文章やメール文案を作成するやアイデアの壁打ちなどを通して業務を効率化することが代表的なものですが、ここでは話題になった企業の生成AI活用事例をご紹介します。

 

パッケージデザイン

株式会社伊藤園は、デザイン開発とマーケティングリサーチのプラグが開発中の「商品デザイン用の画像生成AI」を利用し、2023年9月にリニューアル発売した「お~いお茶 カテキン緑茶」のパッケージデザインを開発しました。量販店向け出荷数の出足は、前年のおよそ2倍と好調に推移しているそうです。
この取り組みにおいて、3つのメリットを挙げています。 メリットの1つ目は、「短期間で大量のデザイン案を出せる」、2つ目は、「デザイン開発期間の短縮」、3つ目は、「忖度(そんたく)なしに議論ができる」です。今回使った生成AIは、飲料に限定したパイロット版であり、2024年春には化粧品など非飲食系のカテゴリーでも使える正式版のリリースを予定しているとのことです。

 

広告用の文章・画像作成

P-MAXキャンペーンとは、Googleが提供している全ての広告枠に広告配信することができる機能です。P-MAXでは、多数の広告をカバーすることができます。このP-MAXに生成AIを使った機能が新たに提供されることとなりました。

この機能とは、アセットと呼ばれる広告情報のかたまり(例:最終ページURL、画像、ロゴ、動画、広告見出し、説明文

ビジネスの名前(会社名)、サイトリンク、行動を促すフレーズなど)を自動的に生成し、提案をしてくれます。

生成される画像については、広告主独自の画像になっており、Googleの生成AIでは、同じ画像は生成されないそうです。

 

電子カルテデータから看護サマリー作成

社会医療法人祐愛会織田病院(佐賀県鹿島市)では、生成AIを医療情報を作成するという、直接的な医療ではない部分での業務効率化を進めています。生成AIで電子カルテのデータを基に入院患者の看護記録「入退院時看護サマリー」を自動作成する仕組みを構築しました。今後は、文書の要約に加えて、電子カルテシステムへの入力作業にも生成AIを適用して業務効率化を図る予定とのことです。

 

バーチャルヒューマンの起用

野村ホールディングス株式会社は2023年6月に新NISA(少額投資非課税制度)の広告ポスターにバーチャルヒューマンのimmaを起用しました。これまでの広告では、その商品やサービスにあったタレントを利用するのが一般的でしたが、バーチャルヒューマンを起用したことが話題になりました。immaはバーチャルヒューマンのため、実在しませんが、インスタグラムのフォロワー数が39万人を超える影響力の大きい「インフルエンサー」です。バーチャルヒューマンの制作に生成AIがどの程度関連があるかまだは、定かではありませんが、大きな話題となった出来事のため、ご紹介しました。

 

<参考URL>

第370回NRIメディアフォーラム

伊藤園が画像生成AIでパッケージ開発 3つのメリットとは:日経クロストレンド 

【Google広告】P-MAXにおいて生成AIを活用した機能を発表:Infinity-Agent Lab

伊藤園や野村HD、広告にAIタレント 効果と注意点は:日本経済新聞

大人気バーチャルモデル“imma”に直撃インタビュー! 知られざる素顔に迫る (oceans.tokyo.jp)

生成AIが電子カルテのデータから入院患者の看護サマリーを自動作成─佐賀県の織田病院:IT Leaders

 

ビジネスパーソンによる生成AIの利用状況

2024年1月に公表されたDocuSignの調査結果「ビジネスパーソン1,000人に聞く!生成AIの利用実態と意向」によると生成AIの認知度は、聞いたことがある人を含めると約90%に達しています。
なお参考までにですが、よく知られている生成AIのサービスのランキングは下記の結果となっています。
・1位:ChatGPT
・2位:Copilot(旧Bing Chat)
・3位:Gemini(旧Bard)


そして、業務での利用状況については、試験的に利用している人を含めると約58%を占めています。

2023年6月に野村総合研究所が発表した「アンケート調査にみる「生成AI」のビジネス利用の実態と意向」(約2,400名を対象)と比較するとこのような違いがありました。

 

まず、生成AIに関する認知度についてです。
この時のアンケートでは、約半数が「知らない」と答えていました。先のアンケートと比べると、この1年で生成AIの認知度が世間に浸透したことが、よくわかります。

では、利用状況については、どのような変化があったのでしょうか。
先のアンケートとは形式が異なりますが、「実際に活用中」は3.0%、「トライアル中」6.7%となっています。

実際に利用するという点においても、大きな変化が見られたことが分かります。

 

<参考・引用L>

ビジネスパーソン1,000人に聞く「生成AI」に関する意識・実態調査:DocuSign

アンケート調査にみる「生成AI」のビジネス利用の実態と意向 ~生成AIを仕事に活用しているビジネスパーソンの割合は3.0%、トライアル中は6.7%。 「ドキュメントの要約」、「マニュアルの作成」などへの活用に期待~:野村総合研究所

 

まとめ

生成AIに関しては、国は本格的な投資を行い、企業はビジネスパーソンは積極的に利用をしているというのが今の状況です。今後、生成AIの市場がますます広がっていくことを考えると、生成AIを利用できることや生成AIについての情報を得ていることは非常に大切なことであることが分かってきました。

 

一方で、デジタル化に不慣れな方にとっては、まだまだ生成AIというのはハードルの高いものかもしれません。生成AIやデジタルについてこれから学ぶ方にお勧めのトレーニングを2つご紹介します。

 

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トレノケートでは上記の他にも生成AIの基礎知識習得のための研修・eラーニングをご用意しています。


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【eラーニング】生成AI早わかり~ChatGPTとその他の生成AIサービスの概要~

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